中小企業と大企業、それぞれのパーパスの意義は?

 では、「パーパス・ドリブンな経営をしたい」と考えた時、どのようなステップを踏めばよいのだろう――その鍵となるのは、「発見→共鳴→実装」の3つのステップだと、後藤さんは説明する。

 パーパスは新たに「作成」するのではなく、これまで会社が持っていた価値や物語から発見していくものだ。歴史や成果、ステークホルダー、構成員の思いといったことを紐解いていくことでオリジナルのパーパスを「発見」していくことができる。続く、「共鳴」はパーパスに触れた時に社員の心が震えることを指す。理解や共感に留まらず、心が動き、行動につながることが肝要だ。最後に、「実装」は、経営メンバーや社員がパーパスに基づいて業務を遂行している状態や、パーパスを軸に事業や商品が開発されている状態だ。

 では、実際に仕事の現場ではどのようにパーパスを実現しているのだろうか。

後藤 「パーパス・ドリブン経営」は組織が小さいほうが実現しやすいです。構成員が少ないので、全員で集まったうえで、「発見」や「共鳴」の時間を設けることが可能です。例えば、中小企業には、年に1~2回、年始や年度末に全社員が集まる会があるものです。そうした日の午後を使い、パーパスの発見に充てることもあります。あるいは、土曜日をまるまる使ったケースもありました。メンバー全員が集まって話し合いをすることが理想ですが、アンケートを駆使したり、部長だけが集まって意見交換したりすることもあります。

 中小企業と大企業のそれぞれにおいて、パーパス・ドリブンな組織となる意義とはどんなことだろうか。

後藤 中小企業の経営者は、「会社を統合するのか、分けるのか」「新規事業をスタートするのか」といった難しい意思決定に常に直面しています。こうした経営判断の軸となるのがパーパスだと言えます。

 一方、大企業においては、多様な事業を展開しているため、それを束ねる意味でパーパスが重要な役割を果たします。新たに入ってきた社員が「うちの会社はたくさんの事業をしているけれど、いったいどこを目指しているのだろう……」と迷った時にパーパスで示されていれば納得感があります。会社のあらゆる事業活動がパーパスに向かっていることを理解できれば、目前の仕事へのやりがいにつながっていくはずです。