路線別の収支を把握していないという
西日本の主張は本当か

 もっともこれはコロナ以前の数字であり、実態は異なる。2020年度決算では約2338億円の営業損失を計上。2021年度は約815~1165億円の営業損失を見込んでおり、今後は利用の回復とともに一定程度の改善は見込まれているが、行動変容により利用は元通りにはならないと見られている。もはや内部補助をするだけの黒字は期待できないのだろうか。

 ところがJR西日本は輸送密度2000以上の路線の収支を公表せず、今後もする予定はないというので実態が分からない。同社は、今回は30線区について収入と費用を配分して「一定の前提をおいた算出のもと」収支を公表したもので、それ以外の線区については計算をしていないと説明する。

 なるほど、今回は手持ちの数字がない。それは分かった。そうであれば追って公表すればいいだけの話だ。そもそも国鉄時代は毎年、路線別の営業係数を公表していた。それが民営化された途端に全く行われなくなったのだろうか。予算を策定する上で、あるいは経営判断をする上で、路線別の収支を全く把握していないということはあり得るだろうか。

 筆者の疑問に対して担当者は「鉄道はネットワークとして考えるのが前提で路線別の数字を算出する文化はなかった」と説明するが、内部補助を前提とした全体の収支を重視するのであれば、なおさら30線区以外の収支が重要になる。

 推測するに全路線の収支を公表すると、ローカル線以上に赤字を生み出している幹線が目立ってしまうのを嫌ったのではないか。営業係数は収入と費用の割合を示した数字なので、運輸収入5000万円で営業係数1000の路線より、運輸収入500億円で営業係数110の路線の方が10倍以上、赤字額は大きくなる。こちらよりあちらが問題ではないかと泥仕合になりかねない。