17路線30線区の
営業損失は248億円

 1980年に成立した国鉄再建法は、輸送密度4000以下の路線を「特定地方交通線」と定め、バスによる輸送の方が効率的であるとして順次、廃止を進めていった。

 このうち最初にバス転換に合意し、廃止されたのは北海道の白糠線だったが、同線の1982年度の輸送密度は94、営業係数は3000超だった。他に廃止対象となった路線も2000から多くても4000程度で、芸備線の5けたの営業係数は前代未聞である。

 ではこれらの区間はどれほどの赤字を出しているのだろうか。今回、同社は営業係数に加えて各線区の3カ年平均(2017~2019年度)の運輸収入と営業費用、営業損失を公表しているが、これによると30線区の営業損失の合計は約248億円だ。

 JR西日本の2019年度単体決算は営業収益約9619億円、営業利益は約1197億円だった。営業収益の9割が鉄道事業の運輸収入だから、少なく見積もっても鉄道事業で1000億円の利益を計上していたことになる。

 1000億円の利益に対して約248億円の営業損失は小さい数字ではない。ただ17路線30線区には近畿圏を走り輸送密度が1000を超える紀勢線、関西線や、山陰地方を横断する幹線・山陰線などが含まれており、現時点ではこれら線区のバス転換や経営分離を地元が受け入れるとは思えない。またJR西日本もそこまで事を急ぐつもりはないだろう。

 JR北海道と同様に輸送密度200以下の7線区に限るとどうだろうか。こちらは合計約26億円の営業損失で、これも決して小さい数字ではないが、この区間を「見直し」しなければ経営が揺らぐほどの数字とまでは言えない。

 2019年度の山陽新幹線と近畿圏在来線の運輸収入は計約7487億円。仮に営業係数を80とすれば約1500億円の営業利益となり、ローカル線の赤字を十分に穴埋めできる利益があると見ることもできる。

 このように都心部の黒字路線が赤字ローカル路線を支える構図を「内部補助」と呼ぶ。どの程度まで内部補助すべきか議論は分かれるところだが、少なくとも全ての路線が黒字でなければならないというのは現実的ではない。