外壁に使える西陣織を使った世界初の新素材
「NISHIJIN Reflected」が完成

 そうして動いているときに、ある方の紹介で、オーダーメイドのバスタブのメーカーの方と知り合う機会がありました。バスタブはどういうつくり方をしているかというと、型をつくって、グラスファイバーシートを敷いて、ゆっくり樹脂を流し込んで硬化させます。

 その技術を使えば、耐水性のある西陣織の外壁素材をつくれるかもしれない。そう思った私は、西陣織の立体構造を生かした、耐水性のある「バスタブ」をつくるところから始めました。バスタブメーカーと協業し、型を作って、グラスファイバーを敷き、そこに西陣織を敷いて、専用に作った樹脂を流し込みました。そうして西陣織のバスタブが出来上がりました。

 しかしそれを外壁に使用できるようにするには、耐火性能も持たせる必要があり、そこにもハードルがありました。時間をかけた研究開発の末、西陣織のFRPに高透過ガラスを圧着することで、耐火性能を持たせることに成功しました。

 そうした試行錯誤の末に出来上がったのが、外壁に使える新素材「NISHIJIN Reflected」です。これも世界初の試みでした。振り返っても開発は簡単ではなく、まさに四年の歳月を費やしました。

 オリンピックや、サッカーのワールドカップが四年に一度のペースで開催されているのも、何か象徴的に思えます。

 ビジネスで事を成すにも、「四年間」が一つの区切りになるのではないでしょうか。

細尾真孝(Masataka Hosoo)
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞(イタリア)、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。