相撲での「すかす」という動詞は、取ったまわしを真っ直ぐに引くこと。「前に出ろ、引くな!」といった相撲の精神性からすれば、確かに引き技には反正統派のニュアンスがある。

「すかし」という音がふわりと軽いせいもあるだろうか。相撲界の隠語である「スカす」は脱走することでもある。土俵から身を引いてしまうのだから、いいイメージのわけがない。

 しかし、反正統派の決まり手ならば他にもある。立ち合いの変化であっという間に勝負がついてしまう「はたき込み」や「引き落とし」のほうが、よっぽど期待外れであろう。その証拠に、はたき込みでは観客からため息がもれるが、肩すかしのときには拍手が湧いているようだ。

 そんなわけで、映画を酷評する際には「ラストは引き落とし気味だった」と言っていただきたい。

 一刻も早く「肩すかし」のイメージを変えなくてはいけない。われわれ相撲ファンが本来のいい意味で使い続け、現状の悪しきイメージを払拭するのだ。

「あの小説、ラストの肩すかし、すばらしかったね」

 そう胸を張って言おう。映画の宣伝文句でも、「戦慄の肩すかし!」とか「肩すかしの連発に、きっとあなたは瞠目する」とか。皆で頑張れば、なんとかなる。

日本人は意外と苦手?
「仕切り直し」の本来の意味とは

 この言葉は、一般でも、ビジネスの世界でも良く使われる。

 言葉の定義は「相撲の立ち合いで、両力士の呼吸が合わず、仕切りをやり直すこと」。仕切りとは相撲の構えのことで、土俵には二本の仕切り線がある。転じて、「ビジネスでの交渉などを、一からやり直すこと」といったところだろう。

 行き詰まってきたところで、フレッシュな気持ちでやり直す。双方が同じ成功を目指しているのだから、プロジェクトをより良くするための処置といえる。

 だがしかし、仕切り直しはつらいのである。