相手も自分も心地いいコミュニケーションをするために、「言葉の使い方」はとても重要だろう。言葉一つで、前向きな気持ちや幸せな気持ちになれるし、その逆も然りだ。このたび、さまざまなシーンごとにすてきな言い方を紹介する『いつもの言葉があか抜ける オトナ女子のすてきな語彙力帳』が刊行された。著者は7万人を超える人にコミュニケーションを伝えてきた吉井奈々氏だ。吉井氏は全国で講演をするほか、発信しているYouTubeの映像は1日10万時間以上再生され、総再生回数は900万回を超すコミュニケーションYouTuberでもある。
今回は、本書の発売を記念し、特別インタビューを実施。第2回は、お見合いパーティーで司会やコミュニケーションセミナーも行ってきた吉井氏に「本当にあった超失礼な質問」や「また会いたいと思ってもらえる質問」について聞いた。(取材・構成:小川晶子 写真:疋田千里)
その1 「子どもは産めますか?」
──吉井さんはお見合いパーティーの司会や、参加者に向けたコミュニケーションセミナーの講師をされることも多いそうですね。お見合いパーティーのような場では、相手のことを知るためにお互いに質問をするかと思いますが、これまで見聞きした中で「それはちょっと…」とつっこみたくなるような質問はありましたか?
吉井奈々(以下、吉井):「ぼくは子どもは3人は欲しくて、男の子も女の子もいたらいいなと思っていて……」といった理想の家族像を語る中で、「で、あなたは産めますか?」という質問をする人がいます。聞いている本人には悪気はないようですけど、アウトですね。
その2 「親と同居してくれますか?」
吉井:それから、「親と同居してくれますか?」もよくあります。家族思いなのだと思いますが、出会ったばかりでそれはないでしょう。「うちは母子家庭で、お母さんにはずっと苦労をかけてきたので、一緒に住んで面倒みたいんです」。それはわかるんですけどね。
仕事一筋でやってきて、あまり異性とコミュニケーションをしてこなかった人も多く、NGな質問がけっこう飛び交いますよ。
その3 「専業主婦希望ですが、いいですか?」
──女性から男性への質問ではどうですか?
吉井:「私は専業主婦が希望なんですけど、それでいいですよね?」あるいは、「私は仕事を続けたくて、家事は苦手ですけどいいですよね?」といった質問がよくあります。お見合いの場合、相手の年収はプロフィール用紙に書かれているから聞かなくてもわかるのですが、「その会社は本当に大丈夫なんですか?」とか「いまは年収500万だそうですけど、どのくらいのペースで上がっていくんですか?」という質問も聞いたことがあります。
──自分の条件に合致するかどうかを質問しているわけですか。
吉井:面接官みたいですよね(笑)。求める人物像に合うかどうかを質問で判断しようという感じです。でも、当たり前ですけどパートナーとして成立するには自分が選ぶだけではありません。相手に選ばれなければ次はないわけです。
大事なのは、「また会いたいな」と思ってもらえるコミュニケーションをすることです。最初に条件を出すのではなく、人として興味を持つことから始まります。そして、信頼関係を深める中で時期がきたら「親と同居したいと思っているんだよね」という話をしていけばいいのです。
一緒にいて楽しい、好印象な人になれる質問とは
──また会いたいなと思ってもらえるためには、具体的にはどうすればいいでしょうか。
吉井:自分が言われたら嬉しいと思う言葉を使うことです。
私は、言葉の使い方がとても大事だと思っています。言葉一つで印象はものすごく変わります。「言葉は乱暴だけどいい人」というのもあるけど、そう言ってもらえるのはレアケースだと思ったほうがいいですね。一見ステキでも、話してみたら残念というほうがはるかに多いです。
お見合いパーティーの話で言うと、パーティーの前に幸せそうなご夫婦3組に会って話を聞いてきてって言います。独身だけで話していると独身の会話に慣れてしまうのですが、夫婦の会話を聞いて「こんな夫婦になりたいな」と思ったら言葉も変わります。
──なるほど。どんな言葉が嬉しかった、気になったという話を聞けると参考になりそうですね! さらにお聞きしたいのですが、お見合いパーティーや合コンなどでタイプだなと思う人に会ったとき、距離を縮めるコミュニケーション法を教えてもらえませんか?
吉井:「自分に興味を持ってくれているんだな」と感じる質問をすることです。
たとえば、サーフィンが好きだと話したときに、「サーフィン興味ないです~」と言われたらシャットアウトされた感じがしますよね。自分が好きなものを否定されるのって傷つくものです。でも、意外に多いんですよ。
たとえサーフィンに興味がなくとも、その人に興味があるなら「やったことないんですけど、海は好きなので興味あります! あまり運動は得意ではないんですけどサーフィンって気持ちよさそう!」「サーフィンの魅力、教えてほしいです!」「サーフィンを始めたきっかけは何だったんですか?」というように、いくらでも質問できるはずです。
──それ自体に興味がなくても、その人に興味があれば「知りたい、教えてほしい」っていうスタンスですね。そうやって聞いてもらったら嬉しくなって、どんどん話したくなりそうです。
吉井:今までまったく興味を持ったことがなくても、これをきっかけに自分が興味を持てるように質問をしてみてください。好きなこと・ものについて質問してくれる人は、絶対に印象いいですよ。
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第1回【飲み会、懇親会で】相手と一瞬で打ち解けられる「超万能の質問」
一般社団法人JCMA代表理事、コミュニケーション講師
企業や教育機関でコミュニケーション講師として活躍。15年間にわたって約7万人に「心を大事にするコミュニケーション」を伝えている。
出生時に割りあてられた性別は男性だったが、性別適合手術を受けて戸籍を女性に変更し、現在は男性と結婚。自身の生き方と経験から、さまざまな立場の人の気持ちを汲んだコミュニケーションが得意。
日本郵政や法務省、日本コカ・コーラ、日産自動車、日本アイ・ビー・エムなど多くの省庁や企業で講演や研修を担当。現場で使えるコミュニケーションスキルやマネジメントの考え方は再現性が高いと評判で、大手コンビニチェーンでの講演は「また来年も聞きたい講演会ナンバーワン」に選ばれる。著書に『オトナ女子のすてきな語彙力帳』など。