「ナルシスト」と聞くと、皆さんはどんなイメージをお持ちになるでしょうか?一般的には、自己顕示欲が強く、自己陶酔する人と捉えられ、ネガティブな印象を持つ方が多いと思います。どちらかというと厄介者扱いされがちですが、実はファーストクラスにお乗りになるエグゼクティブには「ナルシスト」が多く存在しています。今回は、ファーストクラスにお乗りになる「ナルシスト」についてです。(CCI代表取締役・元国際線チーフパーサー 山本洋子)
ただの「ナルシスト」ではなかった! 自慢話を繰り広げる社長
ある長距離路線のファーストクラスに、上場企業社長でも著名人でもない、あまり知られていない会社の創業社長がご搭乗されました。
主に製造業の下請けをする会社だったとおぼろげながらに記憶しています。会社の名前やお仕事内容、そしてどの路線でご一緒したのかも思い出せないほどの印象しかありませんが、社長の顔と言動は今でも鮮明に記憶に残っています。
何が記憶に残っているのかというと、それは社長の「ナルシスト」ぶりです。
ご搭乗になるやいなや、手荷物をCAに預ける際にご自分のカバンを指さし、「これ、かっこいいでしょ」から会話が始まりました。機内着に着替える際には、「このシャツ、似合うでしょ」などとちょっとした自慢話が続きます。
このような口調で会話が始まりましたので、印象は強烈です。最初は「冗談がお好きなお客さまだなあ」くらいにしか思わなかったのですが、さらにサービス中も同じテンションで会話が続いていきます。自慢にしか聞こえない話の内容と繰り返されるナルシストぶりに、最初は少しうんざりしたのですが、会話を進めていくうちに、このお客さまはただの「ナルシスト」ではないと思い始めたのです。
それは、創業した会社のことを話し始められた時です。そのお客さまには信念があるのだと気づきました。