これもある意味で、働き方改革の要素もあるとは思いますが、当然リスクも伴いました。社長の方針に従えない、あるいは変化を望まない社員たちが退職してしまうかもしれないからです。

 私としては、自分が思い描く未来のビジョンになるべく多くの社員に共感してもらいたいのです。もちろん、共感の度合いは人それぞれ、千差万別です。それを一律にしようとしても限界があり、また共感度の高い人材だけを集めても成長しないと感じました。

 そこで、職掌を広げた分は、評価制度や人事制度を改良。現在は社員の多様な意思を尊重する柔軟さのある会社になったのではないかと思っています。

 私が行った改革を具体的に挙げておきましょう。

 まず、会社が今後進んでいく方向性が明確になるように、経営理念を刷新して打ち出しました。次に、前身の労働環境を改善させるために、残業を減らすことを奨励。フレックスタイムを導入し、昼の休憩時間中にお客様からの電話に対応する必要のないシステムも導入しました。

 これらはすべて従業員のための施策ですが、一気に改変しようとすると、中には「残業はするなということですか?」と反発する社員も現れます。一時は、勤務年数の長い社員からかなりの反発を受けたこともありました。

 制度改革などは、一気に断行しようとせず、ある程度の助走期間を設定して、その成果などを検証しながら、社員の意向なども反映させつつ最適な制度として整備していくことが理想的です。