入山 僕の専門である経営学は、人間や組織の本質を捉えようとする学問です。逆にいえば、その理論的視点からは、未来をある程度洞察することもできると僕は考えています。

 そして僕自身は『世界標準の経営理論』の中で、個人と組織の新しいかたちを提示した「ティール組織」の世界観は、これからの未来にありえると書いていたんですね。

 自律分散でつながっていけば、ビジョンで共感した人だけがゆるく集まって、何かをやっていく世界ができる。ただ、それにはブロックチェーンの技術が必要だ、と書いたところで僕の本は終わっていたんです。

 でも、それを踏まえて國光さんの『メタバースとWeb3』を読むと、ティール組織と本質的には同じことが書かれている。

國光 そうですね。

入山 自律分散はこれからの未来の組織の本質の一つですよね。目的に共感し個人が自律しながらつながっていくのが、いちばんいいので。ただ、これまではそのためのインフラがなかった。それがWeb3でできるようになって、トークン(既存のブロックチェーン技術を利用して発行された仮想通貨)を発行して、メタバースによってさらに発展するとか。僕自身が共感しましたし、勉強になりました。

國光 僕も入山先生のご著作や対談記事などを読んで、まさにDAO(Decentralized Autonomous Organization=自律分散型組織)などと近いお話があるなと思っていました。Web3がバズワードとなり注目されているなか、今年はDAOが、去年のNFT(non-fungible token=非代替性トークン)のように世界の一大ブームみたいになっているんです。

尾原 DAOは、トークンのインセンティブの部分が大きな特徴ですよね。

國光 はい。トークンがあることでみんなが頑張って、そのコミュニティーが大きくなってくるとトークンの価格も上がってみんなハッピーになる。ビジョンにそれぞれのインセンティブがくっついてきたところが、これまでの組織のあり方との大きな違いになってくると感じますね。