「モノ言う株主」はカネの亡者なのか?アクティビストが日経新聞に全面広告を出したワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

過剰な内部留保、天下り、開発や新規事業に消極的……多くの問題を抱える日本企業相手に「社長はおやめになったほうがいい」と直言するのがアクティビスト=「モノ言う株主」という存在だ。非の打ちどころのない会社ではなく、あえて改善点の多い会社に投資してきたアクティビストの代表格である著者が、自らの哲学を明かす。本稿は、丸木 強『「モノ言う株主」の株式市場原論』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋・編集したものです。

アクティビストは本当に
「カネの亡者」なのか?

 2012年末にストラテジックキャピタルとして投資を開始して以降、筆者がアクティビスト活動を行い、その後売却した企業は18社にのぼります(2023年12月現在)。アクティビストと言えば「カネの亡者」であり、投資先企業に無理難題を要求し、利益を得たらさっさと去っていく不埒な連中、というイメージが一般的かもしれません。

 たしかに、当初の目的を達成して投資から撤退すれば、その会社のその後の経営については関知する権利も義務もありません。ただし我々について言えば、かつて投資した企業のほとんどが、我々が資金を引き揚げた後も株価のみならず、例えばPBRなどの株式の評価を上昇させています(非上場化したJDL(日本デジタル研究所)と図書印刷は除く)。つまり経営が改善され、市場からの評価や期待が以前より高まったわけです。我々の主な顧客である外国人投資家から、「ミスターマルキ、売るのが早すぎたんじゃないか」と質問を受けることもあるほどです。

 しかし、これこそが我々の誇りです。やるべきことをすべてやり、それによって投資先企業が変わり、株価の評価が変わったと確認できた時点で、我々の仕事は終わる。そこが売りどきなのです。

 もう少し具体的に説明してみます。我々が投資するのは、要は「悪い会社」です。昨今で言えばESG(「Environment/環境」「Social/社会」「Governance/統治」)」への取り組みが遅れている会社、あるいは資本効率の良くない会社など。こういう会社は概して市場からの評価が低く、したがってPBRも1倍を大きく下回っていたりします。

 悪いからこそ、良くなったときのリターンは大きい。そういう会社に投資しながらさまざまな提案を行い、悪い点が改善されれば、市場からの評価は高まる。それによって株価が上がれば、我々のみならず、すべての株主や経営陣、それに社員や取引先などのステークホルダーにとってプラスのはず。これが我々の基本的な考え方です。