モテる条件は「イケボ」よりも
「味と匂いを満たす人」になる?

入山 好きとか嫌いとか「この人はいい人だ」という感覚は、ノンバーバルな部分で判断していることが多いですよね。

國光 今回のメタバースでは「アバターをうまく使うことで、ノンバーバルコミュニケーションもリアルと変わらないところまでできるだろう」というのがひとつの到達点になっています。

 そして、次のタイミングで入山先生がおっしゃっていた視覚と聴覚を完全に再現できるようにし、加えて触覚の一部のところが見えてくる。でも、これは5年先だと思っています。

 逆に、これから数年後は「味と匂いを満たせる男がモテる」という時代がやってくるかもしれません(笑)。

入山 ああ、リアルなほうでは。

國光 よく「あの人の声が好き」とか「見た目が」「仕草が」って言いますが、これらはいくらでもバーチャルだったらつくれるから。逆にリアルだったら胃袋と匂いを満たしてくれる人がすごい価値を持つようになるかもしれません。

 人間だけでなく、まさに入山先生が本やインタビューで書かれていたと思うんですが、都市もそう。東京グルメシティーにするとか。

入山 まさに。以前、京都大学の総長で進化生物学者の山極寿一(やまぎわじゅいち)先生と、霊長類のコミュニケーションについて対談したときの話を思い出しました。

 山極先生は、人間を含む霊長類が互いを認知し合い安定的な関係を維持できる数を“ダンバー数”という数値で理論づけられていて、本当に信頼しあっている猿のコミュニティーは50頭までだそうです。そして猿たちが、どこで信頼感を得ているかというと五感のうちの味覚・嗅覚・触覚なんですよ。

尾原 へええええ。

入山 これは霊長類学で「近接感覚」と呼ばれているそうです。だからチンパンジーは毛繕いをするんです。毛繕いで匂いを嗅いだりすることで、相互認識をしている。ゴリラもお尻の匂いを嗅いだりするじゃないですか。

國光 確かに。