ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から一部を抜粋しながら、毎日1ヵ国ずつ世界の国を紹介する。
ドイツってどんな国?
ドイツはヨーロッパ中央部に位置する国で、フランスやオランダ、ポーランド、チェコなど9ヵ国と国境を接しています。
北部は北海・バルト海に面し、中部にはなだらかな丘陵地が広がり、南部には険しいアルプスの山岳地帯があり、ライン川・エルベ川などの国際河川が国土を貫いています。
ゲルマン民族のなかのフランク族の建てたフランク王国が9世紀半ばに3つに分裂し、その一つの東フランク王国の領域がほぼ現在のドイツに重なります。
ドイツ統一の中心人物は鉄血宰相の異名を持つビスマルクで、その活躍によって1871年ドイツ帝国が誕生しました。
ドイツは大日本帝国憲法など明治以降の日本の国づくりに大きな影響を与えました。またベートーベンなどの音楽、カントなどの哲学、ゲーテなどの文学も日本に多く紹介されました。
第二次大戦では日本と同盟関係を結びましたが敗れ、1949年米英仏の占領地区にドイツ連邦共和国(西ドイツ)、そして旧ソ連の占領地区にドイツ民主共和国(東ドイツ)が発足しました。
1989年秋、民主化を求める市民デモが急速に拡大し、国境であったベルリンの壁が撤廃され、1990年10月3日東ドイツが西ドイツに編入されるかたちで東西ドイツの統一が実現しました。これにともなって戦前の首都ベルリンが再び首都になりました。
高い生産性と技術力で産業が発展
古くから物づくりを大切にしてきたドイツは、高い技術水準を誇る世界有数の工業国でもあります。国民総所得(GNI)はアメリカ、中国、日本に次いで世界第4位(2019年)、輸出入額は中国、アメリカに続いて世界第3位(2020年)です。
基幹産業は自動車・医薬品・精密機械などで、とくに自動車はフォルクスワーゲン、BMW、アウディ、ポルシェ、メルセデス・ベンツなど、高級車の製造で世界的に有名です。
世界から注目が集まる環境問題への取り組み
ヨーロッパ屈指の重工業国として発展してきたことにより、ライン川の水質汚染や酸性雨による森林破壊などさまざまな環境問題に早くから直面しました。
このため、自動車などの工業製品にリサイクル可能な部品を導入したり、再生エネルギーによる発電を急速に普及させたりするなど、環境問題にも熱心で、2011年の福島の原発事故を受けて、2022年末までの原発廃止も決定しています。
EU主要国として、欧州統合の推進とNATOの枠組み重視が外交の基本です。EUの経済・通貨・政治統合においてフランスとともに中心的存在です。
温暖な地域に比べて食材が不足しがちなことからソーセージやマリネなどの保存食が発達しました。なかでもソーセージは1500種類以上にも及びます。豚は混合農業に欠かせない家畜であるため、とくに豚肉料理が豊富です。
またビールを愛する国民で、一人当たりの消費量は世界第5位(2020年)です。
ドイツ連邦共和国
面積:35.7万㎢ 首都:ベルリン
人口:7990.3万 通貨:ユーロ
言語:ドイツ語(公用語)、ロシア語、トルコ語など
宗教:カトリック27.1%、プロテスタント24.9%
隣接:スイス、フランス、ルクセンブルク、ベルギー、オランダ、デンマーク、ポーランド、チェコ、オーストリア
(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIA The World Factbook(2022年2月時点)を参照
(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)