「早雲は室町幕府の武家貴族として、当時の大学とも言うべき禅寺で教育を受けていました。家臣への書状や子孫に残した家訓を見ても、無教養で荒くれ者の多かったほかの戦国武将と一線を画しています。英国では56歳の時の知能指数(IQ)が高いと、16年後の72歳の時に生きている確率が上がるという研究結果があります。研究では、高等教育を受けていることと寿命の間に相関関係があるとも結論づけています」

 戦国武将として成功するには、高い知能と優れた状況判断が求められる。戦(いくさ)に勝つのはもちろん、同盟関係にある武将や家臣の裏切りといったいくつもの謀略や困難を乗り越える必要があるからだ。

ご長寿偉人の健康の秘訣は?週刊朝日2022年6月17日号より 拡大画像表示

「さらに武将にとって何よりも大事だったのは、ライバルよりも長生きすること。定年のない戦国時代は、健康であることが勝利をつかむうえで重要でした」(早川教授)

 武将は庶民に比べて栄養や衛生状態のよい生活を送ることができた。一方で、支配的な立場を利用して、ごちそうばかり食べたり大酒を飲んだり、不特定多数の女性と関係を持ったりした者も少なくなかった。いつ寝首をかかれるかわからない暮らしの中で、普段から強いストレスにもさらされていたはずだ。

「医療の水準は今よりも低く、治療効果の高い薬もありませんでした。そんな中で健康を維持するには、感染症にかからないことも大事。結核や腸チフス、肺炎などにかかれば命にもかかわりますし、梅毒で寿命を縮めた武将も少なくありませんでした」(同)