伊能忠敬像歴史上には70歳、80歳を過ぎてから天下を取ったり、大業を成し遂げた政治家や芸術家たちがたくさんいる(写真は56歳から全国の測量を始めた伊能忠敬の像) Photo:PIXTA

高齢化が進む現代日本。近年、「暴走老人」や「長生きリスク」といったキーワードがメディアでたびたび取沙汰され、老いに対するマイナス面ばかりが目立つようになりました。しかし、長生きや老いは決してリスクばかりではありません。実際、歴史上には70歳、80歳を過ぎてから天下を取ったり、大業を成し遂げた政治家や芸術家たちがたくさんいるのです。長生きと、それに伴う老いや病がかえってモチベーションを上げた老人さえいるのだとか……。大塚ひかり氏著の『くそじじいとくそばばあの日本史 長生きは成功のもと』より、そんな歴史上のしたたかな老人たちにまつわるエピソードを一部紹介します。

家康があと一年早く死んでいたら徳川政権はなかった

 繁栄にとって一番大事なものは「長生き」……日本の歴史を見ていると、そう感じることが多々あります。

 もちろん、前近代は、今よりずっと平均寿命は短いものでした。

 しかし実は、昔の平均寿命が短いのは、乳幼児期の極端な死亡率の高さによります。

「死亡率の高い危険な年齢を過ぎると、平均余命は案外長く、70歳以上の長寿者もまれではなかった」(鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』)のです。

 そんな中、とくに政治の世界では、少しでも長く生きたほうが、権力を手にする可能性も高く、その権勢を盤石のものとすることができました。