壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になった今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題である。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。本書には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。(初出:2022年7月3日、初出時より再構成いたしました)

【漫画家・弘兼憲史が教える】常識を覆す“一流の死に方”【書籍オンライン編集部セレクション】作:弘兼憲史 「その日まで、いつもニコニコ、従わず」

増加する「独居老人」

配偶者と死別し、子どもと別居すると、そこから本格的に一人で生きていくことになります。いわゆる「独居老人」です。

65歳以上の一人暮らし高齢者は、男女ともに年々増加傾向にあります。1980年には男性約19万人、女性約69万人、高齢者人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でした。

これが、2015年には男性約192万人、女性約400万人、高齢者人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%とかなり増加しています。

「孤独死」を迎える心の準備

2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になると、この数がさらに増加するのは確実です。

そうなると一人で生き、一人で死ぬことを想定して、心の準備をしておく必要があるでしょう。最終的に、いわゆる「孤独死」を迎える可能性もあります。

「孤独死=不幸」は間違った決めつけ

孤独死というと、不幸な人生の終幕の象徴のように思われているようです。

高齢で、身寄りがなく、誰に頼ることもできず、貧しい生活を送り、古くて小さなアパートの一室で人知れずひっそりと亡くなり、発見されたときには死後数週間が経過しており……というイメージがネガティブに伝えられています。

孤独死を不幸と決めつけたうえで、孤独死を防ぐためにどうすべきかという対策が語られることもよくあります。

迷惑をかけない死に方

僕は一人でひっそりと死んでいくのも悪くないと考えています。一人暮らしをしていて部屋で亡くなった人=不幸というのは、単なる決めつけだと思うのです。

本人が一人で死ぬことを寂しく感じていたかどうかは、わからないのですから。もちろん、誰にも迷惑をかけないというのが最低条件です。

アパートで腐乱死体で発見されるようなことがあったら、大家さんや近隣住民に迷惑をかけてしまいますから、そうなるのは避けたほうが望ましいでしょう。

立派な死に方とは?

これから技術が進めば、緊急時に遠隔監視のセンサーが作動して、119番に連絡が行くなどのシステムが遠からず導入されるはずです。

「人間生まれるときも一人、死ぬときも一人」。僕には、そういったある種の諦念というか覚悟のようなものがあります。

だから、一人の状況を恐れることもありません。いざというときに発見してもらえる手はずさえ整えておけば、一人で死んで行けばいい。人生をまっとうしたのであれば、それも立派な死に方ではないですか。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。