25年前に香港の主権が中国に返還される数時間前、立法会(議会)議員だったエミリー・ラウ氏は同僚らとともに、議会周辺で黄色のリボンを結んでいた。民主化推進への闘いを継続する決意を表明するためだった。返還を直前に控え、市民のリーダーらが議会バルコニーから一段と開かれた選挙を要求する演説を行うと、群衆は連呼して応えた。それから四半世紀、ラウ氏はもはや議員を務めていない。真の民主化を求める運動もつぶされた。同氏はここ2年、時間があれば、国家安全維持法(国安法)の下で投獄された元同僚の面会に訪れている。ラウ氏もかつて有力指導者の1人として参加していた反政府運動は、国安法の導入で骨抜きになった。「目の前ですべてが崩れ落ちていった」と話すラウ氏。「香港市民も諸外国の人々も、大半はこれほど急激に起こるとは予想していなかった。まさか香港、そして自由や安全がこんな風に崩壊するとは」