部下への権限委譲ができないという管理職の悩みをよく聞きます。信頼して任せたいのだが、任せられる人がいないとのこと。結局、自分で仕事を抱えてしまい、目の前のことに忙殺されている日々から抜け出せないそうです。しかし、日本と米国、両方の企業でのマネジメント経験から見ると、このような管理職の皆さんは、権限委譲について根本的な勘違いをしています。それが理解できない限り、この問題は解決されません。(アークス&コーチング代表 櫻田 毅)
部下に任せられなくて
仕事を抱え込んでしまう上司
かつて勤めていた会社にAさんという50代の部長職の方がいました。英語が堪能で毎月のように海外に出張して、提携企業とのやりとりを一手に担っていました。
そんなAさんの口癖は、「若手がだらしないから、いつまでも俺がやらなければいけない」というもの。若手にもっと裁量権を委ねて自分は部長ならではの仕事をしたいのだが、任せられる部下がいないので、仕方なく自分が出張しなければならないとこぼしていました。
Aさんのように、部下への権限委譲に苦労している管理職の方をたくさん見ます。彼らも判で押したように、「任せられる部下がいない」と口にします。目をつぶって権限委譲をしてみたのだが、自分で判断できずに業務が停滞してしまったとか、適当な判断をしてトラブルを起こしてしまったなど、うまくいかない経験をした方も少なくありません。
結局、「やっぱり任せられる部下がいない」という出発点に戻ってしまい、自分で仕事を抱えて目の前の仕事に忙殺され続けています。
しかし、このような問題が解決されないのは、管理職の皆さんが権限委譲について根本的な勘違いをしているからです。では、その勘違いとは何で、どこをどう直せば権限委譲がうまく機能するのでしょうか。