「野党第一党」と呼ばれる現状に
満足さえしてしまっている

――比例代表で、自民党の得票率は34.4%、公明党の得票率は11.7%であり、自公合わせて46.1%と、全国の投票者の半分に届きません。自公は協力して候補者を統一する一方で、野党はお互いが競合して票の分散が起きており、票の数では野党が上回っていても、議席数で与党に大差をつけられています。しかしながら野党は共闘どころか、より分断が進んでいる印象です。

 政党交付金(政党助成法に基づき、毎年、所属する国会議員の数や、過去の国政選挙の得票数に応じて、政党に交付されるもの)も出るし、下手に政権を取ったら大変なので、野党はこの状態が一番いいと思っている。

――今のポジションが居心地がよくなってしまっている、と。

 そうだろう。野党第1党である立憲民主党は、前身である民進党が、希望の党への事実上の合流を決めたときに、小池百合子氏の方針に反発した議員たちによって結党したもの。いわば、小池氏に排除された議員たちの受け皿として誕生した政党だ。しかし、国民の判官びいきもあり、今では野党第1党となった。

 こうした流れを鑑みるに、優れた政策や戦略はなかなか生まれにくい。「野党第1党」と呼ばれる現状に満足さえしてしまっているふしがある。

――与党に対抗しうる政策を考案して精緻化し、それをわかりやすく国民へ伝えられるような戦略家は野党にはいないのでしょうか。

 皆、選挙運動に必死なので、ゆとりがないのだ。与党の場合はそういったことは経験値が豊富な官僚がサポートしてくれるが、野党は自分たちでやるしかない。この国をどうするか、安全保障をどうするかといったことを、具体的に練る余裕などまったくない。

 野党内に「必ず政権を奪取する」という意欲と戦略を持つ者が出てきて、頭角を現さない限り、いつまでもこのような状況が続くだろう。

党内の分裂を抑えることができなければ
岸田政権自体が揺らぐ危険性

――自民党と公明党に加え、憲法改正に積極的な姿勢を示す日本維新の会、国民民主党の4党で、改憲発議に必要な「総定数の3分の2以上」の議席を獲得。今後、改憲に向けた動きや議論が活発化しそうです。

 僕は憲法改正はすべきだと思っている。自衛隊が創設されたのが1954年、自民党が発足したのが1955年。自衛隊創設の翌年に、自民党が発足したという事実は、憲法改正を語る上で重要だ。

 憲法の9条には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と記されているが、自衛隊は戦力も交戦権を有しており、当時、誰が見ても明らかに憲法と矛盾していた。そのため、自民党初代総裁の鳩山一郎や岸信介などは、憲法改正を強く訴えた。

 しかしそれ以後の池田勇人や佐藤栄作は、安全保障を米国に任せることにして、憲法改正については言わなくなった。おかげで日本は戦争に巻き込まれることがなく、70年以上、平和を維持することができた。だが近年は、世界情勢がガラリと変わり、日本の安全保障を主体的に考えざるを得なくなってきている。

――今後の政治の焦点は何だと思いますか?

 一番の問題は、日本の安全保障をどうするかだ。そして、安倍さんの派閥が今後、どうなるか。自民党最大派閥を誰が継ぐのか。政治に詳しい人たちの間では、分裂するのではとも言われている。

――自民党内が群雄割拠に入るかもしれない。

 あるいはそうだ。今回の参院選が終わった後は、2025年の参院選まで、大きな国政選挙はない。その間の「黄金の3年」において、与党は安心して政策を進められる。同時に、安心して派閥抗争もできる。

 岸田首相はこれまで、重要な政策はすべて、安倍さんと相談しながら決めてきた。最大派閥を率いていた安倍さんがいなくなった党内を、岸田首相がしっかりとコントロールできれば、このまま自民党「一強」体制は続くだろう。しかし、党内の分裂を抑えることができなければ、派閥間で奪い合いが始まり、岸田政権自体が揺らぐ危険性がある。