「改革なく、文在寅や朴槿恵にそっくり」と
批判を受ける尹大統領

 政権交代後、文在寅(ムン・ジェイン)政府時の左派改革課題が、まともに解決できていないという批判も出ている。野党は、尹大統領の親族が大統領室選任行政官であることと、NATO首脳会談における民間人同行問題を連結して、大統領夫婦の「陰の実力者政治」として国会で問いただそうと意気込んでいるが、大統領室は、大統領室人事秘書官がスペイン公務に家族を同行したことについては「公的組織内に勤める行政官に対して陰の実力者を疑うのは、悪意的フレーム」と反論した。これまでの歴代政権でも見つけるのが難しい事例なのに、該当行政官の経歴や業務関連性などに関する説明がない状態で、そのような反論をしたところでどれくらいの説得力があるのか、疑問である。

 コロナ・パンデミック、米中の覇権争い、ロシアとウクライナの戦争などにより、世界のグローバル供給網が急変し、最近の経済危機には、国際的な要因が大きく作用している。イ・ジュンナン仁川大教授は、「国民は大統領に対して、未来の準備となる『政策的アジェンダ』と、実質的なプログラムを期待しているのだが、尹大統領はまだそのようなビジョンを見せることができないようだ」と語った。

 しかし尹大統領側は一切口を開かず、今後の様子をうかがうつもりのようだ。大統領室は、「支持率の上昇と下降は、一生懸命やれという国民の意思であると、常に解釈している」と述べているが、支持率下落の原因に関しては、「いろいろと分析できると思うが、あえてここでは話さない」と、言葉を濁した。国民を相手に懇談会を開催するとか、双方向の疎通を図る、リーダーシップを発揮して説得するなど、尹大統領ならではの新しい統治スタイルを、見せられずにいる。

 就任してからまだ2カ月しかたっていないのに支持率が40%を切ってしまい、ただの「飾り物大統領」に転落してしまうのではないかという声も多い。韓国社会では、任期初めに支持率が高騰することを、「ハネムーン期間」と呼ぶが、否定世論が肯定世論を追い越す「デッドクロス」が起きて、「事実上、ハネムーン期間は終わってしまったのではないか」との声も出ている。特に韓国内の左派陣営における与党に対する敵愾(てきがい)心は、ピークに達したといえよう。「黄金の3年」を担うことになった岸田首相の盤石ぶりとは、対照的に見える。