尹錫悦大統領就任以来、
日韓関係に動きが出てきた

 韓国政府は、尹錫悦大統領がソウルの日本大使館に設けられた安倍元首相の弔問所を訪問したり、韓徳銖(ハン・ドクス)国務総理と鄭鎮碩(チョン・ジンソク)国会副議長などで構成された弔問使節団を日本に派遣したりと、東アジアを綿密に見回す外交的な解決法を模索している。5年間にわたって停滞した日韓関係を解こうとする姿勢は、尹錫悦政府が、これまでのいつの時代よりも強く出ている。

 岸田首相もまた、日韓関係に前向きな姿勢を見せている。尹錫悦大統領が業務を引き継ぎつつあった4月に日韓政策協議団を日本へ派遣した時、岸田首相は協議団に会って「日韓関係改善は、これ以上待てない、緊急な懸案」と、明らかにした。岸田首相および日本閣僚の代表団との面談の背景には、日韓関係の改善を要求する、米国側の意図もあったとみられる。バイデン政権は2月に「インド太平洋戦略」を発表したとき、日韓関係の強化を主張した。「台湾に軍事的な圧力をかける中国に対抗するためには、日韓を含むインド太平洋地域内の友好国家と連携を強化しなければならない」という内容も含まれた。安倍元首相の死去後、韓国政府は使節団を日本に派遣する「弔問外交」を行う中で朴振(パク・チン)外交部長官は17日に岸田首相に会い、18日には林芳正外相との会談で「徴用工問題の早期解決」ということで意見が一致した。

日本側の基本姿勢が変わらない以上、
楽観はできない

 6月29日にスペインで開かれた、4年9カ月ぶりの日米韓首脳会談で、岸田首相は硬い表情を崩さなかった。5月に東京で開かれた日米首脳会談で終始見せた微笑とは、180度違っていた。韓国メディアは「文政権の尻拭いを」と日韓首脳会談に期待していたが、開かれることはなかった。

 韓国政府は、7月4日、民官協議会を発足させ、日韓関係最大の懸案である徴用工問題のための直接的な解決法の摸索を始めた。日韓両国で共同基金を作り、被害者に補償し、韓国政府が原告に賠償金を支給して、日本に求償権を行使するという、「代位弁済」が議論されている。

 徴用工問題を解決するためには、被害者からの有効な同意を得て、国民世論に配慮しなければならないのだが、被害者側の一部は「日本の心からの謝罪が、まず最初」という立場を譲らないため、この件は、まだまだ難航するだろう。岸田首相・林外相がいずれも「早期解決」を望んでいるとはいえ、「韓国がまず、解決策を提示すべきだ」という日本の立場は変わらない。当面は、そう簡単に問題解決はできないだろう。