ある日いつも通りセミナーを開催し、終わったあとに参加者を送り出していると、何度も参加してくれる原田さん(37歳、男性)が、周りを気にしつつ「ちょっとこれを見てほしいんです」と、スマホを川中さんに手渡してきました。見てみると、SNSのスレッドにびっしりと文字が書いてありました。その内容を読んでいくと、川中さんが詐欺師であるとか、だまされた人の恨みつらみの言葉が引用されており、そのアカウント自体が川中さんへのネガティブキャンペーン専用のものでした。

 川中さんは、このような攻撃を受けることは初めてのことでした。川中さんの人間性を知る運営メンバーや、原田さんのようにセミナーに何度も参加している人たちには、でっち上げの内容であることはすぐに分かりましたが、これからセミナーに参加しようとしている人には、川中さんが詐欺師であると信じてしまう人もいるかもしれません。

 川中さんたちは、まずはどこの誰かも分からない相手がどういった攻撃をしているのか調べることにしました。

ネットのでっち上げで
受講者や講師依頼のキャンセル相次ぐ

 調べていくと、複数のSNS媒体、複数のアカウントで同様のネガティブキャンペーンが張られていました。書き込みは全て同じ内容で、コピーアンドペーストで量産しているようでした。事態は悪化する一方で、セミナーの参加予定者からのキャンセルが相次ぎ、さらには講演や、複数の大学で行っていた講師の依頼も、キャンセルや見直したい旨の連絡が立て続けにありました。

 ネットで仕掛けられたでっち上げの攻撃により、今まで築き上げてきた仕事がなくなり、信頼関係がみるみるうちに崩れていったのです。このままではセミナー業が立ち行かなくなり、サポートしてくれるメンバーにも給料が払えず、セミナーの内容に賛同してくれる人たちの期待にも応えられなくなると思った川中さんは、私に「人捜しをしてほしい」と相談に来たのです。

 こういったケースに対応したことのない私は、何から取り掛かればよいのか全く分かりませんでした。しかし、「まずは対象者につながる糸口を見つけなければ」と思いついたことは、情報収集に努めることと、これから接触してきそうな所への先回りでの対応でした。

 私や川中さんを含めたメンバーで、とにかく川中さんへつながるネガティブキャンペーンの情報を、想定されるあらゆるキーワードでネット検索しました。