対象者といざ対面
探偵たちの準備は2時間前から

 待ち合わせ時間の2時間前に調査員の3人が集合し、大きなホテルラウンジへ続く幾筋もの動線のチェックや、徒歩や電車や車など何通りもの移動手段への対応シミュレーションを終え、対象者側が配置するかもしれない監視者の存在にも注意を払いながら、対象者の到着を待ちました。

 待ち合わせ時間の30分前には原田さんがラウンジに到着し、事前に指定した監視しやすい席に座ってもらいました。その直後に対象者らしき人物が男性と女性1人ずつを伴ってラウンジに現れ、原田さんの席に座りました。あらかじめ双方の服装と特徴を連絡しあっていたので、スムーズに対面できましたが、もし対象者の方が早く到着して、着席する場所が違っていたら監視態勢も変わっていたため、間一髪セーフといった状況でした。

 対象者は紛れもなく大山氏で、一緒に来た男女も大山氏にたぶらかされた川中さんの運営チームの元メンバーでした。

 川中さんへ疑念を持っているふうの原田さんのお芝居が功を奏して、大山氏は「一緒に川中さんをつぶして、そのセミナーを乗っ取ろう!分け前は弾みます!」と仲間にスカウトしてきました。1時間ほどの対話を終え、大山氏一派は席を立ち、ホテルが手配したタクシーに乗り、走り出しました。懸念していた尾行への警戒感は全く見られず、難なく自宅を割り出すことができました。これも全ては準備・段取りと原田さんの協力あってのものでした。

 その後は証拠を固め、刑事事件と民事事件の双方で訴え、裁判で勝訴したそうです。

 新たな脅威や犯罪が発生すれば、対応していくしかありません。その時に我々探偵が依頼者への助けの一助になるためには、重ねてきた経験とは別に、知識をバージョンアップさせることが急務となっています。

「新たな脅威や犯罪」へ「己をバージョンアップして対応する探偵」。点と点が線になる探偵トークでした。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。