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最年少名人の記録を更新した藤井聡太八冠。2024年5月現在、豊島将之を相手にタイトル防衛戦に臨んでいる。かつて藤井は豊島に公式戦で6連敗を喫しており、藤井の師匠である杉本昌隆八段は「将棋界七不思議の一つでは?」と語った。そんな2人は、互いをどう評価しているのだろうか。本稿は、朝日新聞将棋取材班『藤井聡太のいる時代』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

「王位・棋聖」VS「竜王・叡王」
藤井と豊島の二冠同士が激突

「三冠を目指す二冠同士の激突」と注目されたのが2020年10月5日、関西将棋会館での藤井聡太と豊島将之の一戦。

 王将の渡辺明への挑戦権を争う第70期王将戦の挑戦者決定リーグ戦。勝者は王位・棋聖の藤井か、竜王・叡王の豊島か。

 王将リーグは7人の総当たりで、それぞれ6対局し、優勝者が王将に七番勝負を挑む。「2敗すると単独首位での挑戦権獲得は難しくなる」が定説だ。

 本局は両者にとってリーグ2戦目。初戦で豊島は木村一基に勝ち、藤井は羽生善治に敗れた。本局は特に藤井にとって負けられない一局だった。

 戦型は「相懸かり」に。先手の豊島が序盤で工夫した指し方を披露。

 その後、リードを奪った藤井が豊島玉を追い詰めたが、明快な勝ち筋を逃し、混戦に。対局開始から約11時間後、勝ったのは粘り強く指した豊島だった。

 逆転負けした藤井は「(挑戦には)厳しいスコアになってしまいました」と話した。

 公式戦での対戦成績が豊島6連勝(=藤井6連敗)となったことも話題だった。

 藤井にこれほど大きく勝ち越した棋士はこの時点では豊島だけ。藤井戦6連勝の感想を後日、記者が尋ねると、豊島は、しばし沈黙した後、「たまたまだと思います」。

 実は、非公式戦だが、18年12月の新人王戦の記念対局では藤井が豊島に勝っている。

 終局直後の対局室内は公式戦同様の真剣な気配だった。こうした事情に加え、本局も大逆転勝ち。6勝0敗という数字ほどの差は無いと豊島は感じていたのだろう。

「公式戦6連敗」難敵・豊島との戦い
持ち時間を使い切り「1分将棋」に突入

 朝日杯将棋オープン戦の名古屋対局は1月恒例で、本戦トーナメントに参戦する16棋士のうち8棋士が名古屋市に集い、準決勝進出の2枠を争う。スター棋士を間近で見られる公開対局も人気だ。

 2021年1月、第14回朝日杯名古屋対局は17日に愛知県瀬戸市在住の藤井と同県一の宮市出身の豊島が登場。

 午前の1回戦で2人とも勝利。地元ゆかりの二冠同士の激突が午後の2回戦(準々決勝)で実現した。