失業問題の深刻化
貧富の格差拡大も避けられない

 懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった。建国以来で見ても、新卒学生を取り巻く雇用環境は最悪だろう。中国人留学生の中には、帰国せず日本での就職を目指す者が多い。

 今後、中国では銀行の貸しはがしや貸し渋りが増える。不動産をはじめ民間企業の資金繰りは切迫する。ウクライナ危機をきっかけに、世界全体でインフレも深刻だ。中国では生き残りをかけてリストラに踏み切る企業が増え、若年層を中心に失業率は上昇するだろう。となると、共産党政権に不満を持つ人が増える展開が予想される。

 その展開を回避するために、習政権は高速鉄道などの公共事業を積み増すだろう。しかし、経済全体で資本効率性は低下基調にある。高速鉄道計画では、ほとんどの路線が赤字だ。追加のインフラ投資は、地方政府の借り入れ増を必要とする。結果として、経済対策は不良債権の温床になる。

 強引なゼロコロナ政策の継続で、個人の消費や投資は減少せざるを得ない。他方、成長期待の高いIT先端企業の締め付けも強まる。8月からは改正版の独占禁止法が施行される。連鎖反応のように、中国全体で企業の業績は悪化するだろう。

 逆に言えば、一時的な失業増を伴う構造改革の実行は容易ではない。今のところ、共産党政権は公的資金を注入し、エバーグランデなどを救済する姿勢も示していない。

 中国では、追い込まれる企業・個人・地方政府が増える。その結果、資金流出が加速し、人民元の先安観は強まり、ドル建てをはじめ債務のデフォルトリスクは高まるはずだ。資産売却などリストラを強行せざるを得ない企業は、追加的に増えるだろう。

 失業問題が深刻化することで、貧富の格差拡大も避けられない。中国は不動産バブル膨張によって、過剰な債務・雇用・生産能力が出現した。今後は、その整理が不可避だ。