一方で、こんな意見もあった。一つは、二舅と同じような運命にあったという人が、現にたくさんいると「証言」する声だ。

「うちの村にも隣村にも、医者の治療によって体が不自由になったのが何人もいた」

「今さら何?まったく珍しくない。彼よりもっと悲惨な人がいくらでもいる」

 また、二舅が置かれている境遇への批判や疑問など、厳しい声も多く上がっている。

「苦難と貧困を美化してはいけない。この動画は、国民はどんな苦痛があっても、それに耐え、従順し、国に迷惑をかけないでと言っているのと同じじゃないのか?」

「なぜ二舅は、障害者になったのか、なぜその後教育を受けられなくなったのか……。根本的な原因は何か。原因を突き止めてこそ初めて格差がなくなり、社会が進歩するのだ」

 二舅が障害者でありながら、適切な保障を国から受けられていなかったことを問題視し、「社会保障制度」の課題について指摘する声が多く見られた。

深刻な都市部と農村部の「格差問題」
動画は改革のきっかけとなるか

 また、支援に関しては、中国の都市部と農村部における格差の問題も深刻だ。20年12月9日配信の記事『中国発展の陰で深刻化する「農村部の高齢者問題」、参考は日本の介護制度』でも述べたように、少子高齢化が急速に進む中国では、高齢化社会への対策や障害者支援はほとんど都市部に集中していて、農村部をスルーしている状況だ。経済の格差が、地域の社会保障の格差にも反映されている。

 21年に発表された中国の国勢調査によると、中国の60歳以上の高齢者人口は2億6400万人に上る。また、別の調査によれば、高齢者のうち約1.4億人は農村部にいるという。農村部では、医療や介護の資源が少なく、病気となれば死を待たざるを得ない人が少なくない。また、動画内でも二舅の母が自殺を試みたことが述べられているが、近年、農村部の高齢者の自殺が急増しているという研究報告もあるという。

 動画は、村の夜を映し出した場面で終わるが、そこでは爆竹の音がしている。若者が都会へ出稼ぎに行き、高齢者しか残っていない荒涼な村は、よくイノシシに襲われるのだという。爆竹の音は、イノシシを追い払うためのものだ。

 10分強の動画が、現在の中国における多くの農村の現実を映し出した。あまりにも話題になったため、わざわざ河北省の村に出向いて内容を検証する人が続出しているという。しかし、中国国内では、「これが真実かフィクションかはもはや重要ではない。実際、農村には似たような経験をしている人がたくさんいる」という声が多く上がっている。

 この動画には、世界第2位の経済大国である中国におけるさまざまな深刻な社会問題が凝縮されており、多くの人々にこの現状を変えなければならないと思うきっかけを与えた。果たして、この盛り上がりが農村の福祉政策の改善につながるのだろうか。注視していきたい。