戦後の高度経済成長の時代、日本でも地方と都市部での「地域格差」が大きな問題となった。経済発展が著しい中国でも内陸の農村部と都市部での経済・地域格差は大きくなり、中でも高齢者をめぐる問題は深刻となっている。その解決策として、日本の介護保険制度や社会保障制度が参考にされ、研究されている。その実態と課題について解説する。(日中福祉プランニング代表 王 青)
中国全土に衝撃を与えた
息子による母親生き埋め事件
11月、ある判決が中国で大きな話題となった。中国の農村部で起きた殺人未遂事件であり、半年前のこの痛ましい事件の光景が再び大衆の面前に映し出されたからだ。
その事件は今年の5月初旬に中国・陝西省〓林地区(〓は木偏に人の下に一、月にりっとう)で起きた。58歳の息子が79歳の母親を黄土荒野の深さ2メートルの穴に生き埋めにしたという事件だった。
多くの中国人は親や家族を何よりも大事にする風潮がある。従って、実の母親を生き埋めにするというのはあまりに衝撃的であり、当時、このニュースはたちまち中国全土に広がった。
逮捕された息子の供述によると、母親は半年前に転倒して立ち上がれなくなり、寝たきり状態だった。その間、失禁がひどく、排せつ物で度々ベッドを汚し、家中に不快な臭いが充満した。貧困の悩みに加え、介護で疲れ果てた末に殺意が芽生え、生き埋めにしたという。