2012年はまれに見る政治の年だった。日米中露仏韓と世界の主要国で、政権が替わるか、新政権が発足した。それを投影して経済も不安定だった。さて、安倍新政権は、対外的には日中、日韓の関係改善という難題を抱える一方、大幅な金融緩和と財政出動を掲げてスタートを切る。政府部門はGDPの200%にも達する借金を抱え、再生は容易な道ではない。「巳年」の巳は草木の成長が極限に達して、次の生命が創られることを意味するという。果たして、日本は再生の糸口を見つけらるのか。そうした状況下、2013年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。

たなか・しゅうせい
元経済企画庁長官、福山大学客員教授。1940年長野県生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒業。83年、衆議院議員初当選。93年6月、新党さきがけ結成、代表代行。
細川政権発足時、首相特別補佐。第一次橋本内閣、経済企画庁長官。現在、「民権塾」塾長も務める。

①グローバル経済の進展による分裂の深刻化

 グローバルな市場経済の急激な進展により、先進国、新興国、途上国を問わず経済格差が一段と拡大し、政治的、社会的分裂状態が深刻化する。

理由:この世界的な経済格差の拡大傾向に対して、今のところ有効な本格的国際協調の努力は始まっていない。

 筆者は1997年のアジア経済危機以来、「野放しのグローバル経済を檻に入れろ」と強く警告してきた。しかし短期資金の暴力的な動きや複雑怪奇な金融商品の出現さえ今もって有効に規制できず、数年に一度は世界的な経済危機となってわれわれの経済や生活を根底から脅かしている。

 功罪半ばするグローバル経済の負の部分をいかに減じていくか。それが国際的な重要課題になる年としたい。

②中国の覇権主義が国際問題化

 中国の覇権主義が、周辺国の脅威となり、国際問題化してくる。

理由:習近平総書記は就任直後に、「中国は覇権主義をとらない」と明確に言明した。

 だが、総書記があらためてそう言わねばならないほど、多くの国が中国の覇権主義に警戒感を強めている。

 西沙、南沙諸島問題でのフィリピン、ベトナムなどとの関係、尖閣問題での日本との関係をはじめ、中国は周辺国との関係で多くの領有権問題を抱えている。これらをめぐる中国の一方的な主張や行動は今や「アジアの問題」にとどまらず国際問題にも発展する雲行きだ。

 尖閣問題も今後は日中の二国間問題の域を越え、国際社会で覇権主義の展開の一環と受け取られるだろう。