カリスマ経営者として知られる日本電産の永守重信会長は、京都先端科学大学の理事長として、偏差値教育に偏った日本の大学教育の変革に取り組んでいる。その中で、自分の夢を持ち、夢を語ることができる人材の育成に力を注ぐ。優れたリーダーに求められる「夢を語る力」とは?
*本稿は、永守重信『人生をひらく』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集したものです。
この国に足りないのは「夢」を語る力
偏差値教育は根本的に間違っている
2018年に現在の京都先端科学大学(KUAS)の理事長に就任してから4年、附属の中学校高等学校を整備しながら、学生のみなさん、生徒のみなさんと対話する中で、はっきりとわかったことがあります。それは、日本の教育は根本的に間違っている、ということです。
一番わかりやすい例が、いわゆる「偏差値教育」です。日本の教育は、「何をやりたいか」ではなく、「どこに入れるか」で進路を選んでしまっています。親や学校の先生、あるいは予備校の講師が「君の成績なら、ここを狙える」とアドバイスするから、生徒のほうでも「そういうものか」と思って、唯々諾々と従ってしまう。
中には「いや、私は工学部に行きたい」と希望を言う生徒がいても、「工学部は君の偏差値だと難しい。合格できそうな別の学部に入ったらどうか」などとアドバイスしてしまうため、明確な目標もないまま大学に入学し、4年間を無為に過ごすことになるのです。
日本の教育が間違ってしまっていることの責任は、私たち大人にあります。親も、先生も、経営者も、誰も夢を語らないから、子供たちも夢を持つことができないのです。
私が大きな夢を語ると、「また永守が大ボラを吹いている」と批判の声が聞こえてくることがありますが、私はホラを吹いているのではなく、夢を語っているのです。
この前も、附属の中学校高等学校で話をしたとき、「君は何をやりたいと思っているんだ」と聞くと、「うーん」と考え込む生徒が多かったので、私は自分がなぜモーターの会社を立ち上げることになったのかを言って聞かせました。