中国では人間関係が濃密であるために、ある地域では、政府が前期高齢者(という言葉は中国にはないが、イメージ的には50代後半~60代くらい)にスマホの使用法を研修で教え、前期高齢者が後期高齢者(70代以上)に教える仕組みを作った。また、子供世代が熱心に親世代に教える風潮があるため、「親に教える手引」のようなアプリがたくさん誕生している。その他、WeChatで「友達を追加、写真のシェア、タクシーの予約方法」などのやり方を分かりやすく説明する動画もネットに上がっている。

WeChatを提供するテンセントのWebサイトには、使い方を分かりやすく説明する動画がたくさん掲載されているページがある Photo:TencentWeChatを提供するテンセントのWebサイトには、使い方を分かりやすく説明する動画がたくさん掲載されているページがある Photo:Tencent

 中国政府は、自分の両親はもちろん、公共の場所などでスマホの使い方に困っている高齢者を見かけたら、手助けしてほしいと若者に呼びかけている。そしてアプリ開発企業へ、高齢者が使いやすいように、字の大きさ、色など約数十の項目について指導した。またこれらのアプリには、広告の挿入を禁止、支払いの画面には必ず確認画面を設定するなどの規定も加えられた。

日本でもおそらく今後、
中国と同じ問題が起きる

 中国が抱えているこうした高齢者のデジタル難民問題は、今日の日本から見て決して人ごとではないだろう。日本は中国よりも高齢化社会である。東京では、65歳以上の単身世帯が81万以上、世帯全体の11.24%にも上ると報道されている。

 最近、日本でもデジタル化が急速に進んでいるのを感じる。例えば、医療関係においては、病院はネット予約システムを採用するところが増えた。薬局のアプリを使えば、お薬手帳の代わりになるし、処方せんを送信しておけば、待たずに処方薬を受け取ることができる。レストランでもタッチパネルやQRコードでの注文が多くなった。外食チェーン店が提供するアプリでは、割引クーポンの利用やモバイルオーダーが可能なうえ、ポイントももらえる。また最近、スーパーや100円均一ショップでは無人レジやスマホ決済が増えている。これらのサービスは、若者が上手に活用し、便利さを享受しているが、今後はうまく対応できず、苦労する高齢者も増えていくと思われる。