人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せています。本日は、コロナと薬についての寄稿記事です。
コロナにロキソニンは効く? 飲んでも大丈夫?
コロナになったらどのような薬を処方されるのかご存じでしょうか。
新型コロナウイルスに罹患された方から「抗生物質を出して欲しい」というお声をいただくことがあるのですが、基本的に全く効果が期待できないのでおススメしていません。
抗生物質は「細菌」を殺すために設計された薬です。
「ウイルス」への効果はなく、新型コロナ「ウイルス」への効果も当然ありません。むしろ腸内で人間の体にとって良い働きをしてくれている細菌を殺してしまい、下痢などの副作用が出現する場合もあります。
例えるならば、魚を虫取り網で捕まえようとするくらいミスマッチな行為なのです。
新型コロナウイルスに感染した軽症の方が抗生物質を飲むメリットはないでしょう。このあたりのリテラシーを持っておき、患者サイドとしてもコロナを治したいからといって抗生剤の処方は希望しないようにしましょう。
そして、新型コロナに感染した時のよくある症状が発熱・のどの痛みです。この場合「熱」「痛み」両方の症状に効く、最もよく使用される薬が、「解熱鎮痛剤」であり、代表的な薬が「カロナール」と「ロキソニン」です。
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解熱鎮痛剤に関して言えば、新型コロナ流行期は、例えばイブプロフェンが感染を悪化させる要因になるという説が流れていましたが、現在は否定されています。
そしてデータが多い訳ではないのですが、カロナールもロキソニンも一定の安全性が担保されているため、両方とも使用が可能となっているのです。
ではこの2つの薬にはどのような違いがあるのでしょうか?
まず、作用の仕方が異なります。痛みや発熱の元々の原因は組織の「炎症」です。
そしてその炎症で発生した「プロスタグランジン」という成分が痛みを感じやすくさせたり、体温を上げるよう脳に要求したりする事で痛みや熱が生じるという仕組みなのですが、ロキソニンはこのプロスタグランジンが生み出される一歩手前の所で生産にストップをかけます。
その作用で熱が下がったり、痛みが軽くなります。
一方でカロナールは、脳にある「視床下部」という体温を調節する司令塔のような場所に作用し、脳から脊髄へ、痛みを伝える経路を抑える働きがあるのではないかと言われています。
大きな違いとしては、ロキソニンは「炎症」を抑える効果が期待できますが、カロナールはあまり期待できないという点が挙げられる訳です。それではロキソニンの方が良い薬なのではないかと思われるでしょうが、他の視点、例えば、副作用をみてみましょう。