終活サポートやシニアの人生相談を数多くこなす筆者のところには、親のケアに悩む現役世代からの相談もやってきます。中には、忘れられないほど壮絶なものもあります。それは、40代の会社役員からのSOSでした。尊敬する父がおかしくなってしまった、銀座のクラブからの高額請求、コンビニに立てこもり警察からの呼び出し、さらには妻に性暴力を振るってしまい、八方塞がりだというのです。(百寿コンシェルジュ協会理事長、社会福祉士 山崎 宏)
もう数年前の話だが、強烈すぎて忘れられないエピソードを紹介したい。ある日、40代のビジネスパーソンAさんからSOSの電話が鳴った。Aさんは東京都品川区に本社を構える上場企業の役員で、同社の代表取締役であるAさんの父親についての相談だった。
父・Bさんは、認知症患者の5%程度が該当するとされる「前頭側頭型認知症」の診断を受けている。これは俗に「ピック病」と称される疾患で、難病指定もされており、明確な治療法はない。本人は普通に生活できるし病気の自覚もないのだが、いったんスイッチが入ると人格変容を起こし、反社会的な行動を起こしてしまう。だからこそ余計に厄介な病気で、家族が抱える悲壮感は半端ではない。
銀座のクラブから100万円超えの請求書、コンビニで無銭飲食
ある日、Aさん宛に請求書が届いた。発行元は銀座のクラブ、金額はなんと100万円超えという高額の請求書だった。クラブで遊んだのは父のBさんだ。社会的地位の高い立場だから、各方面との付き合いもそれなりに多いのは分かる。しかし、一晩で100万円を散財というのは、常識では考えにくい。しかもBさんの豪遊は1回だけの話ではなく、3回もあった。