接客、新規事業、法人営業の中でわかったこと

 社内研修を通して、「うきうき」「わくわく」「いきいき」した気持ちで働くことの大切さを伝えていった板谷さん。「うきうき」「わくわく」「いきいき」という言葉はたまたま思いついたものではなく、板谷さんがJALに入社以来培ってきたさまざまな経験と、人との出会いから生まれたものだという。

板谷 私は、子どもの頃からスチュワーデス(現在の職種名=客室乗務員)になりたかったのです。耳鼻科系が弱かったことから、機内ではなく空港での接客をしようと思い、「地上女子サービス職」の採用試験を受け、採用されました。憧れの会社に入社できて喜んでいたら、最初の配属先は総務部……ショックで、空港に配属された人を羨ましく見ていたときもありましたが、仕事をしているうちに「総務の仕事も、社員に対するサービス業」だと気づくことができました。そして、明るく元気に働いていた4年目に接客のカウンター・セールス部に異動になり、その後、「JALプラザ」へ出向となりました。当時、「CS(カスタマー・サティスファクション)」という概念を初めて知り、すごくうきうきしたのを覚えています。「CS」に関する本を読みあさっていたら、「お客様に満足していただく」ではなく、「お客様が満足する」という表現があって、お客様を主体にした考え方に強く惹かれました。

 念願だった接客の仕事をするようになって、「うきうき」の種を見つけた板谷さんだったが、異動の話が再び訪れた。

板谷 接客の仕事を離れるのは悲しかったですが、尊敬する上司であり、「JALプラザ」の取締役を務めていた女性から、「仕事をずっと続けたいなら、次の異動先には、あなたにとって素晴らしい出会いがある」と送り出されました。命じられた職場に行ってみたら、社内のエリートたちが集まっていて、投資案件や開発についてのプロジェクトを進めるなか、ビジネス用語がバンバン飛び交っていました。

 私は部署の事務担当だったのですが、あるプロジェクトで、ハワイに建設中のリゾートホテルのスパを私自身が体験することになりました。すごく気持ちがよくて、リラクゼーション効果もあって、「スパは働く女性に必要」というレポートを書いたら、「この仕事をやりたいか?」と上司に聞かれ、「やりたいです!」と即答しました。

 板谷さんは、出張先で、上司から「その英語力だとビジネスでは通用しない」と言われ、悔しくて、帰国後には英会話スクールにも通った。そうして、JALの新しいリゾートホテルの東京事務所のメンバーとなり、現地とやりとりしながらPRなどの仕事を担当した。自分のスキルを磨きつつ、無我夢中で働く毎日だったが、やがて、ホテルのオペレーションがグループ会社に移管され、板谷さんは法人営業部門に異動となった。

板谷 営業の仕事はあまりやりたくなかったので、「会社を辞めて、何か新しいことを始めようかな」などといったんは思いました。でも、ホテルの仕事をしていたとき、“一生懸命やっても、周囲をなかなか説得できない”ということが自分の中で引っかかっていました。それは、単に、英語力や表現力の問題ではなく、私がビジネスの世界をわかっていないからだと思い、「楽しく働くために経営学を学ぼう!」と、仕事の傍ら、通信教育で「経営」を学び始めたのです。組織で働く意義やリーダーシップ、モチベーションについてのテキストや関連書籍を読んで、また、わくわくしてきました。