企業理念の浸透には“若手を巻き込むこと”が大切
板谷さんが取締役を務める株式会社タンタビーバは、「人とビジネスのいきいきをデザインする」というキャッチフレーズを掲げて、企業や組織の人材開発・育成を多角的にサポートしている。タンタはイタリア語で「たくさんの」「いっぱいの」、ビーバは、「万歳」「歓声」の意味だ。人もビジネスも、たくさんの万歳や歓声につつまれること――それはまさに、“「うきうき」「わくわく」「いきいき」働くこと”から生み出されるものだ。
板谷 タンタビーバでは、企業向けの研修も行っていますが、「教える」というよりも、みんなを「応援する」という姿勢です。組織を良い方向へ変えていくためには、まず、社内の人が自社のことをしっかり把握していることが必要で、現状を理解されていれば、こちらもどう応援すればよいかが見えてきます。
新規の仕事を受ける際には、経営層の方々とお会いする機会も多いのですが、さまざまな経営者の方とお話しして感じるのは、「やはり、会社というものは、トップが思うような会社になる」ということ。だからこそ、“企業理念”と、それに伴う“行動理念”はとても重要だと思っています。
あるとき、地方企業の人材開発担当の女性が「自社の理念を社内に浸透させたい」と、私を訪ねてきたことがありました。そこで私は、「上層部の人が動くのではなく、若手社員を集めて、“どうしたら理念が伝わるのか、どうしたら会社を好きになれるのか”を彼ら彼女たち自身で考えてもらったらいかがでしょう?」と提案しました。結果、ワークショップを重ね、最終的に若手社員たちが映像を創るまでに至りました。その際、上層部の方々には人材開発担当者の仕掛けの応援団になっていただきたくて、社員のマインドの重要性を伝える機会を設けていただきました。
このエピソードのように、経営者や管理職ではなく、現場の担当者や若手社員の発信が職場に大きな変化をもたらすこともある。板谷さんは、“若手を積極的に巻き込むこと”が重要なポイントだと語る。
板谷 会社の理念は簡単に変えるものではありません。でも、仕事の現場でできることはいろいろあります。たとえば、若手社員が達成感を持てるプロジェクトを部門横断で行えるかを検討したり、毎年の会社の“キャッチフレーズ”をみんなで考えたりするのもよいと思います。「明るい会社」「楽しい会社」といったキャッチフレーズが出てきたら、どうしたらみんなが“明るく楽しく思えるようになるか”をグループワークで考える――「自分たちが発信者になる」という意識を持つようになれば勢いが出ます。
若い人の多くは、誰かが教えなくても自分なりの夢や目標を持っているし、やりたいこともはっきりしています。自分自身で考え、行動できる人が増えていけば、職場も変わっていくでしょう。