痛風持ちは心筋梗塞や脳卒中を起こしやすい。それも「痛風発作」の直後~数カ月は特に注意が必要らしい。
英国の研究グループは、およそ6万人の痛風患者(平均年齢76.5歳、女性30.7%)のうち、痛風と診断された後に心血管疾患(急性心筋梗塞と脳卒中)を起こした1万475人と、それ以外の5万2099人のデータを比較。さらに心血管疾患と痛風の両方を経験している1421人のデータを加味して、両者の関係を調べた。
その結果、心血管疾患を起こすリスクは、痛風発作後の0~60日で1.89倍、同61~120日で1.64倍に高まることが示された。
121~180日では1.29倍と多少は落ち着くが、高リスクであることは間違いない。
研究者は「痛風発作(急性関節炎)で生じる炎症が、血管の内側に集積したプラークを刺激した結果、プラークが破綻し血管を詰まらせるのでは」と推測している。
痛風発作直後から数カ月間は、急な胸の痛みや冷や汗、吐き気といった心筋梗塞の兆候や、ろれつが回らない、片まひといった脳卒中の症状に注意を払い、万が一のときは救急車を呼ぼう。
急性期のみならず、痛風発作そのものを抑える努力もしたい。
痛風の背後には「高尿酸血症」が隠れている。尿酸は生体の新陳代謝に欠かせない「プリン体」のいわば「燃えかす」で、通常は血中に溶けて体内を運ばれ、尿や糞便中に排せつされる。
ところが、尿酸が血中に溶ける濃度には上限があり、一定の濃度を超えると尿酸が結晶化して関節などに蓄積される。さらに、その結晶を免疫細胞が「異物」と捉え攻撃することで急性の炎症──痛風発作が生じるわけだ。
結晶化を防ぐには、暴飲暴食を慎むと同時に、血中尿酸値上限の7ミリグラム/デシリットルを超えないように尿酸の排せつを促すことが肝心。
たとえば、牛乳は尿酸の排せつ促進作用がある。1日240ミリリットル飲むか、低脂肪ヨーグルトを1週間に480ミリグラム食べてみよう。1日2~3杯のコーヒーも痛風予防に働く。砂糖抜きのカフェオレを定番にするとよさそうだ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)