同情と人気で「第二の永山則夫」に?

 事件直後、山上容疑者の不幸な家庭環境が明らかになると「殺人は決して肯定されるものではないが気の毒すぎる」と同情論が盛り上がり、「ハイスペックな塩顔イケメン」などと持ち上げる「山上ガール」なるファンまでできた。これまでの大事件の犯人のパターンでいえば、今後は熱心な支援者と「獄中結婚」をするはずだ。

 さらに旧統一教会の高額献金や宗教2世の問題が注目を集めたことで、ついには減刑を求める署名活動がスタート、今月14日16時時点で8433人が賛同している。また、カンパも集まっており、時事通信が9月8日に報じたところでは、全国から100万円を超える現金が差し入れられている。

 このような「山上人気」をメディアが放っておくわけがない。

 もし山上容疑者が「なぜ僕は安倍元首相を殺そうと思ったのか」なんて手記を出せばベストセラー間違いなしだ。当然、多くの出版社が拘置所に「口説き」の手紙を送っていることだろう。手記には壮絶な少年時代や、家族が崩壊していくストーリーなども語られているはずなので、ドラマ化もありえる。テレビ関係者も熱い視線を送っているはずだ。

 また、山上容疑者に対して、「不幸な境遇が犯罪に走らせてしまった」「犯行前に知人に送ったメールを見ると文才がある」なんて評価もあるので、純文学の作家としてデビューをさせることを考えている人々もいるだろう。

 1968年に連続射殺事件を起こした元死刑囚・永山則夫のケースもあるからだ。

 年配の方は覚えているかもしれないが、永山則夫も幼い頃からネグレクトを受けて、壮絶な貧困の中で育ったことで、逮捕後に一部から同情論がわき上がった。その後、獄中で数々の作品を執筆したことで、国際的にも高い評価を受けて、日本の死刑廃止論議にも大きな影響を及ぼした。

「旧統一教会さえなければいい人生を送っていたに違いない」と同情の声が多く寄せられる山上容疑者は、「第二の永山則夫」になるだけの条件はそろっているのだ。

 そこに加えて、既に山上容疑者をモデルにした映画が制作されており、安倍氏の国葬当日から公開されるという。監督は「日本赤軍」の元メンバーということで、暴力革命的なことを遠回しに肯定しているのかと思いきやそうではなく、あくまで「国民的な議論」を活性化することが目的だという。

 このような「山上コンテンツ」がこれから大量につくられていくはずだ。中には「やったことは悪いことだけれど」という前置きを付けながらも、「悲劇のヒーロー」という扱いをする作品も出てくるだろう。