社長自ら夢を語り
集まったのは「変わり者」たち
結果的に来てくれた人は少々変わっている人、が多かったように思う。他の会社に採用される能力は持っているけれど、個性が強いために組織に馴染みにくかった、というような人たちだ。そういう人たちに入ってもらい、なんとか仕事を進めるのだが、変わり者同士の集まりなので、ぶつかり合いが始まる。当初のメンバーの中には、早々に辞めてしまう人もいた。
私は、社員に還元することは非常に重要だと考えてきた。採用のためにも給与水準は高めに設定していた。同業他社と比べると、2、3割は高かったと思う。しかし、いい待遇であっても、辞める人全員を引き止めるほどの威力はない。
そして創業期はまだ、新卒採用をする余裕などないから、集まるのは中途採用の人材ばかりだ。社会経験があるだけに、それまでの職場の企業文化の影響を色濃く受けてしまっている人が多かった。例えば、車のセールスをやっていた人は、「売ってナンボ」 の世界観を持っている。自分がこれだけ売ったのだから、これだけペイバックしてほしい、などという要望をされたりもした。
しかし、そもそもICチップを売るのと、車を売るのとは違う。商品力の問題もあるし、ICチップの場合には技術職をはじめとするチームのサポートも大きい。こういうことを理解してもらうのにも時間がかかった。
中途採用の人材は即戦力ではあるけれど、それまでの職歴で培った常識を持っていて、それなりの色に染まっている。そんな人材が集まっているので、判断の基準もそれぞれが違うことから、会議をやっても、なかなかかみ合わない。