サポーターズ CEO 楓博光さん Photo by Kazan Yamamotoサポーターズ CEO 楓博光さん Photo by Kazan Yamamoto

DXに取り組んでいるエンジニアは、血の通った人間だ。だからこそ人材採用が重要だが、優秀なエンジニアは引く手あまたで、中途エンジニアの採用は年々厳しくなっている。そんな中、三菱UFJ銀行、日揮、ファーストリテイリングをはじめ、DXに力を入れる非IT企業の間で、新卒エンジニア採用がじわじわと活発化している。非IT企業が新卒エンジニアを振り向かせるには、どうしたら良いのだろうか。『ゼロからわかる新卒エンジニア採用マニュアル』の著者で、約7万人に及ぶエンジニア学生の就職活動を支援してきたサポーターズ CEO 楓博光(かえで・ひろあき)さんに、採用広報から用意すべき年収額まで、ざっくばらんに聞いた。(聞き手/ノンフィクションライター 酒井真弓)

IT人材の7割以上がIT産業で働く日本、
非IT企業にエンジニア採用のチャンスはあるのか

――日本では、IT人材の7割以上がIT産業で働いています。一方、アメリカではIT人材の64.5%が、ドイツでは61.4%がIT産業以外に従事しています。IT人材がIT産業に偏りすぎていることは、日本のDXが遅れている一因だと言われていますが、非IT企業がエンジニアを採用することの難しさを示しているようにも見えます。

 実は、みんながみんな積極的にIT産業を選んでいるかというと、そうではないんです。最近の就活トレンドを非常に単純化すると、エンジニアを目指す学生の1~2割がGoogle、サイバーエージェント、DeNAといった自社サービスを持つIT企業に入社し、8~9割がSI(システムインテグレーター)企業に入社します。

 SI企業に入社する学生は、全員がSIを志望していたというわけではありません。母数が多いですから、中には「自分たちのサービスを開発したい」と考えている学生も相当数います。しかし、IT産業以外の選択肢を調べきれていない学生にとっては、SIが学びを生かせる唯一の選択肢に映るケースも少なくない。非IT企業が注目すべきはこの層です。

 非IT企業でも、自社サービスを持ち、自分たちで考え、自分たちで変えていけるなら、学生にとって非常に魅力的に映ります。新卒エンジニア採用市場において、競争優位性となり得るんです。