第2期事業の複線化で
安定輸送問題を解消

 奈良線は現在、日中1時間当たり京都~奈良間に普通2本、みやこ路快速2本、京都~城陽間に区間列車が2本設定されている。これはほとんどが単線の路線としては類を見ない「過密ダイヤ」だ。

 JRが発足した1987年の時刻表を開いてみると、京都~木津間が全区間単線だったこともあり1時間当たりの運行本数(片道)は朝・夕ラッシュで最大3本、日中は1~2本にすぎなかった。もっともその10年前、1978年は終日1時間あたり1~2本の運行だったから、これでも随分実用的になったといえるのかもしれない。

 民営化後、JR西日本は本格的に奈良線の機能向上に乗り出す。東福寺・黄檗・城陽の各駅に交換設備を新設するなど設備改良を進め、1991年3月に普通列車を増発(最大毎時4本化)し、快速列車を新設した。

 続いて1998年から「第1期高速化・複線化事業」に着手し、京都~JR藤森・宇治~新田間、計8.2キロの複線化や、新駅の設置、駅設備の改良などを行った。これは京都~木津間34.7キロの24%にすぎないが、複線化で快速列車などの増発が可能になった。

 その後も奈良線では宇治市や城陽市など沿線でまちづくりが進み、京都都市圏の通勤・通学輸送が継続して増加。またコロナ禍前は沿線の寺社仏閣への観光輸送でも重要な役割を担っており、特に伏見稲荷大社への外国人観光客は2013年から2018年までの5年間で8倍に増加したという。

 第1期事業で輸送力増強を果たした奈良線だが、依然として抱えていた問題が「安定輸送」だ。単線としては限界以上の過密ダイヤであり、ひとたび列車が遅延すると広範囲の列車に影響を及ぼし、ダイヤの回復には時間がかかる。

 そこで複線化率を24%から64%まで引き上げ、京都~城陽間で行き違いを不要とすることでダイヤの安定性を向上させようというのが第2期事業の目的だ。従って従来の輸送力増強策とは性質が異なり、複線化後も列車の増発は予定していない。ただ行き違い待ちの解消により、所要時間は短縮される見込みだ。