2030年度に札幌延伸開業予定の北海道新幹線を巡って北海道が揺れている。朝日新聞(電子版)が8月31日、「函館線、大部分が廃線濃厚 新幹線アクセス以外は不透明 貨物も分断」と報じたのである。なぜこのような事態になったのか、その背景について解説する。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
長万部~小樽間は
バス転換が決定
整備新幹線は開業と同時に、並行する在来線をJRから切り離し(JRが望めば切り離さなくてもよい)、地元自治体などが出資する第3セクターに経営移管される仕組みを取っている。いわゆる「並行在来線」問題だ。
これまで並行在来線が廃止されたのは、機関車2両を増結し急勾配を走行していた信越本線横川~軽井沢間という特殊な事例を除き、全ての路線が3セク会社に引き継がれてきた。
しかし、あまりにも利用者が少ない路線は地元が引き継いだところで経営が成り立たない。そしてまさにそれが問題となるのが北海道新幹線の並行在来線となる函館本線だ。2021年度の各区間の輸送密度(1キロ当たりの1日平均利用者数)を見ると、函館~長万部間は1636人/日、長万部~小樽間が340人/日、小樽~札幌間が2万9584人/日である。
札幌都市圏の通勤路線であり電化もされている小樽~札幌間は、JR北海道の中で最も利用が多い区間だ。これを経営分離する理由はないので、新幹線開業後も同社が運行することが決まっている。
しかし長万部~小樽間はJR北海道が廃線の目安として挙げる輸送密度200人/日をわずかに上回る程度の利用しかない。沿線協議会の資料によれば、全区間を3セクに転換すると30年間で計927億円の赤字が生じる見込みで、早々に廃止してバス転換することが決定した。同区間は優等列車、貨物列車は運行されておらず、ネットワークへの影響はほとんどないという判断だ。