会社をひとつの家族と見立てる「ファミリー制度」
永田 社内フリーエージェントやポストチャレンジ制度は、キャリアを考えるうえで大きな節目になりそうですね。こうした公募制度が8月にまとめられているのはなぜですか?
丸紀 8月は夏休みもあるので、家族と接する時間が増えますよね。そういった時期に募集があると、今後のキャリアのことを家族に相談しやすいので、自ずと手を挙げる方が増えるのではないかと思って、8月を「キャリアを考える月」と位置づけています。海外留学や社員区分の転換なども含めて、「キャリアのことは8月に考える」という風潮ができつつあるので、そこに合わせてさまざまな施策を展開し、皆さんのキャリアを後押ししています。
永田 2019年に「ファミリー制度」をつくったとうかがいました。こちらは、会社をひとつの家族と見立て、新入社員や新しく組織に加わったメンバーを育成・サポートする考え方ですね。
丸紀 そうです。もともとコロナ禍以前から、当社では、上司と協力しながら新入社員を育成する先輩社員を「ファーストブラザー、シスター(ファーストブラシス)」と呼んでいて、新入社員ごとに任命されていました。このファーストブラシスの皆さんがOJTということで、新入社員の隣りに座り、手取り足取り業務を教えていたのですが、この数年はリモートワークが増えたことで、そうした指導が難しくなりました。でも、しっかりと育てていかなければいけないことは同じですから、職場と人事が連携し、育てていく環境を整える観点で、年1回だったフォローアップ研修を年3回に増やし、ファーストブラシスと一緒に参加するカリキュラムを導入する等、体制を変えながら、新入社員の育成に取り組んでいます。
永田 3回のフォローアップ研修では、それぞれどのようなことをするのですか?
丸剛 新入社員の様子を見ながら内容を調整しているのですが、1回目は入社から3カ月の振り返りと先輩社員との関わり方について、2回目は同期同士のつながりができるようなプログラム、3回目は1年間の振り返りとセルフマネジメントについて、というテーマを考えています。やはり、最初の1年がこれから先を決めていくと思うので、会社としてしっかりと支援したいですね。職場まかせにするのではなく、人事も一緒にやっていくという姿勢を見せたいと思っています。新入社員は大切な人財です。そのことを新入社員自身にも理解してほしいです。
丸紀 また、新入社員と職場と人事部をつなげるために、育成状況を記録する「ファミリーノート」を作っています。シートに「自分はいまこんな状況で、こんなことが課題で、研修ではこんなことを学んだ」などと記録し、それを職場メンバー全員に公開して、アドバイスをもらうのです。新入社員の状況がオープンになるので、何ができて何ができないのかを周囲が把握できるようになりますし、「自分は指導担当ではないけれど、ここは分かるから教えようか?」と先輩が進んで声をかけることにもつながります。新入社員が孤独を感じずに済む、ということが大切です。
永田 コロナ禍で働く環境が変わったことを受けて、フォローアップの体制を整え直したのですね。さらに、新入社員一人ひとりをフォローする場も設けていらっしゃるとうかがいました。
丸剛 はい、「フレッシャーズ・ブートキャンプ」という任意参加型の実践研修を年間通して展開しています。新入社員と一口に言っても個性はバラバラですし、業務によって必要なスキルも違いますので、通りいっぺんの研修ではなくて、自分の特性や必要性に応じて学んでいただく場が必要だと思ったのです。そこで学んできたことを業務に生かしていただき、業務のなかで再び課題が出てきたらまたブートキャンプに参加して……という繰り返しを、職場と人事が連携しながらサポートしています。