米軍にも同様の靴があるが、靴が浸水しても重くならないように水抜けの良いポリエステル製でさらに両足の内側に左右2個ずつ排水用の穴が開いている。水を抜くことのできるこの靴があれば、足を清潔に保つことができ、塹壕足の症状も緩和できるはずだ。

 しかし、残念なことだが、この高機能な靴は一般隊員には配られていない。訓練箇所や状況に合わせて適した靴を選ぶことができる予算があればいいのにと思う。このように自衛隊の靴一つとっても、さまざまな機能がある。その靴や被服の機能で自衛隊員が十分に能力を発揮できることもあれば、行動不能に陥ることもあるのだ。

自衛隊の装備は
なぜ統一されているのか

 自衛隊の装備は、高機能でかつ統一されていなければならない理由がある。

 一つ目は、個々で装備が違えば同一環境下で受ける影響に差が生じ、部隊の円滑な行動に支障が出るからだ。

 また、二つ目は、ハーグ陸戦条約という法律で交戦者の4条件の一つが「遠くからでもわかりやすい徽章をつけること」であるからだ。自衛隊が国を守る正規軍と認識されるためには同じ制服や徽章を使うことが国際法のルールだ。この4条件を満たすことができなければ、正規軍として扱われず、捕虜になったときの人道的な取り扱いがされない。テロリストや便衣兵のように扱われてしまうので、制服が統一されていることは重要なことだ。

 自衛隊の被服はこの条件もあり、用途に合わせて国から隊員に支給される。自衛隊の迷彩服には自然環境に溶け込み、敵から視認されにくいだけでなく、難燃性や赤外線暗視装置に探知されにくい加工が施されている。銃弾や砲弾など火薬類を扱うために耐火性に優れた布地も使われている。一つ一つの機能に意味があり、その機能が必要な場所に十分になければ有事に大きな差が出てくる。

 塹壕足への対策についても、排水可能な靴でリスクを減らすことができるのだから、その装備品が防衛に必要であれば、予断無く全隊員に支給できる準備を整え、隊員たちの任務達成を国は全力で支援してほしいと思う。