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商社が相次いで投資熱を高めている分野がある。“食肉”だ。
昨年、三菱商事は伊藤ハムや米久との合弁を通じて中国の食料最大手COFCOと提携、2017年までに約1250億円を投じて生産拠点を倍以上に増やす計画だ。
伊藤忠商事も今年1月、カナダ最大規模の養豚・豚肉生産会社HyLifeの株式33.4%を約50億円で取得、他商社も北米の養豚場への投資などが決まりそう。いずれも巨大市場と化す中国の胃袋がターゲットである。
それもそのはず。例えば、豚肉は世界の年間消費量が1億トンと最も多い肉だが、中国だけで5000万トンを占める。伊藤忠商事の萩原武畜産部長は、「豚肉はいかに中国を中心としたアジアに売っていくかが勝負。日系だけでなく、世界中の企業が販売力強化のためにしのぎを削っている」と明かす。
さらに、食肉分野の強化には別の狙いもある。商社自らが養豚場など生産拠点を確保することで、自社でトレードしているトウモロコシなど、飼料用穀物の安定的な納入先を同時に獲得することができるのだ。
実は、豚肉を1キログラム生産するためには約7キログラムの飼料用穀物が必要といわれ、世界の食肉需要が大きくなるにつれて、当然エサとなる穀物市場も急拡大している。
とはいえ、商社にとってはトレーディングだけでは利幅は増えない。また、激しさを増す競争や、天候などのリスクもある。そうしたものを相殺する一つの手段として目を付けたのが“畜産”というわけだ。
高まる需要で収益を伸ばしながら、同時にリスクヘッジを図ろうという、いかにも商社らしいビジネスといえる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 脇田まや)