仕事や子育てが一段落した50代、60代に訪れる無力感、虚無感……そんな「アダルト挫折」に、どう向き合えばいいのでしょうか。
人気絶頂の中、日本でのすべての芸能活動を休止し、渡米してから約30年。その生き方と圧倒的な個性で注目を集めてきたタレント・野沢直子さんも、実は20、30代の頃、実は59歳で大きな壁にぶち当たったといいます。
還暦をまえにして「人生後半戦の生き方」について語ったエッセイ集『老いてきたけど、まぁ~いっか。』も大きな話題を呼んでいる野沢さん。今回は本書の発売を記念し、人生の苦境を乗り越えるためのヒントを、野沢さんにもらうことにしました。(取材・構成/川代紗生、撮影/榊智朗)
50代は、実は一番迷いが多い時期
──エッセイには、「きっと誰もがふと立ち止まって、人生を振り返ってしまう50代」と書かれていましたよね。どんどん老いていくんだなあという実感が急に湧いてくる、と。
野沢直子(以下、野沢):いま、私59歳なんですけど、ちょうど28、29歳の頃と同じ感覚があるんですよ。
──同じ感覚?
野沢:29歳、59歳って、がむしゃらにやってきたことが一段落するタイミングだと思うんです。私の場合は、子どもが3人とも巣立ってしまって、ちょうど30代、40代でやってきた子育てに、区切りがついた。子どもが巣立っていくのは喜ばしいことなのに、なんだか寂しい。
おまけに、「人生100年時代」と言われてるじゃないですか。ってことは、この野沢直子という人間と、あと30年くらいは付き合わなきゃいけない。しかも、若い頃の自分じゃなくて、見た目も中身も劣化してきた、この先も劣化し続けるであろう自分との30年ですよ。長いですよね(笑)。
この状況って同世代のみんな、きついと思うんですよね。子育てだけではなく、仕事も落ち着いて、第一線からちょっと外れたところにいる、という人も多いはずだから。
──なるほど。ちょっとした虚無感、と本にも書かれてましたよね。
野沢:そうそう、そうなんです。子育てに関してやることが何もないっていう状態で。すごくバタバタしてたのに急にパっと立ち止まる瞬間がきちゃった。あれ? いままで何してきたんだろう? 私、これからどうやって生きていけばいいんだろう?って、59歳のいまも、いろいろ考えちゃうんです。