写真:車座対話で和牛生産者(右)の訴えに耳を傾ける岸田文雄首相和牛生産者(右)との車座対話にマスクを外して臨んだ岸田文雄首相(10月10日、鹿児島県) Photo:JIJI

岸田文雄政権の新型コロナウイルス対策が迷走している。今夏の参議院選挙後から相次いで緩和策を打ち出す首相は、マスク着用について屋外は原則不要とし、屋内でも距離確保や無会話の場合は必要ないとして「脱マスク」へ向けた基準見直しに着手すると表明した。だが、加藤勝信厚生労働相は新たなルールづくりに否定的な考えを示し、国民の多くもいまだマスクを手放せないでいる。今冬にインフルエンザとの同時流行が懸念される中での「脱マスク」はリスクになるとの声も強く、「空気が読めない首相」への不満も見られる。(イトモス研究所所長 小倉健一)

コロナ対策の緩和を巡って目立つ
首相官邸と厚労省のチグハグ感

「新たな(マスクのルールを示す)、という言い方はされていないと思います」。加藤勝信厚生労働相は10月11日の記者会見で、新しいマスク着用基準を示すことに慎重な考えを示した。

 このわずか5日前の10月6日、岸田首相は「マスク着用のルールを含めた感染対策の在り方について検討していく」と表明。側近の木原誠二官房副長官も「屋外、屋内を問わず全体を整理する」と翌7日の記者会見で述べていた。

 社会経済活動との両立を急ぎ、新型コロナウイルス対策の緩和策を矢継ぎ早に打ち出す首相官邸サイド。それに対して「インフルエンザとの同時流行」を懸念する厚労省とのチグハグ感は目立ち、専門家にも戸惑いが見られる。

 10月13日に開かれた政府の新型コロナ感染症対策分科会は、厚労省が示した「同時流行」対策について了承した。その想定は、新型コロナ患者が1日当たり45万人、インフルエンザ患者が同30万人規模という厳しいものだ。

 同分科会の尾身茂会長は「『第8波』は、第7波以上の高い波になると言われている」と、会合後の会見で警鐘を鳴らした。また、行動制限を含む実効性の高い強力な感染防止措置などを早期に検討すべきとの考えを示している。