プロジェクトは“ゆとりの楽しみ方”も提案していく

 ゆとりうむプロジェクトは、生活者への基本アクションとして、1:暮らしを「見直そう」 2:暮らしを「工夫しよう」 3:ゆとりを「楽しもう」 と提案している。「時産」が心身の「ゆとり」につながり、生活者一人ひとりの充実した生活を創り出すことが目指すべきゴールだ。

長沢 「時産」による “ゆとり時間の過ごし方”も提案していきたいですね。“時間がうまれたからこそできること”を、ゆとりうむプロジェクトからいろいろ発信できれば、と。たとえば、ヘーベルハウスさんは、「アウトドアリビング」という言葉とともに、バルコニーでご飯を食べれば、ちょっとしたアウトドア気分を味わえ、それが“ゆとり時間”になることを提案されています。ゆとり時間の楽しみ方は人それぞれですが、「こんなことはどうですか?」とお伝えしていき、それが良い提案になれば、「……だったら、私も時産してみようかな」と、考えていただけるかもしれません。

“道半ば”というゆとりうむプロジェクトだが、現時点とこれからの「ゆとりうむ」を長沢さんはどう見ているのか。冷凍貯金ラボ、家事ハック大賞2022、アンバサダーによる発信……積極的にメッセージを続けるプロジェクトの向かう先は?

長沢 ゆとりうむプロジェクトは、2030年のSDGsの達成時期をひとつのゴールに据えています。2030年には、ゆとりうむの考え方が世の中全体に広まっていることを目指しています。コロナの影響もあって、現時点では、予定していたスケジュールよりも多少遅れているかな、というのが正直なところですが……。

 ゆとりうむの考え方が浸透することで、アンコンシャスバイアスも減っていくと私は思っています。家事は女性がするべきものという偏った価値観が、「時産」を通じて、みんなが家事に向き合っていく意識に変わっていくのではないでしょうか。私自身、かつては仕事と家事の両立に苦労していましたが、現在は、「時産」の意識で、仕事と家庭生活に多少のゆとりを得て、うまれた時間で何をしようかと考えているところです。

 ゆとりうむプロジェクトは、SDGs5(ジェンダー平等と実現しよう)とSDGs8(働きがいも経済成長も)の実現に直結するが、SDGs3(すべての人に健康と福祉を)につながることも忘れてはならない。“ゆとり”は心身の健康維持に欠かせず、「時産」によってうみ出されるからだ。たとえば、プロジェクト参画企業の旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)が提唱するランドリークロークは、洗濯と収納をワンフロアで完結させるという「時産」のアイデアだが、洗濯における階段の上り下りがなければ、高齢者や障がいのある人の心身への負担は減るだろう。“ゆとりを楽しむ”というゴールとともに、“ゆとりを喜ぶ”ことが、いまの社会にとって大きな価値がある。

長沢 ゆとりうむの起点がレトルトカレーにあったように、家事における「時産」は料理時間の短縮と考えがちですが、食に関すること以外に、お掃除や洗濯における「時産」も、みんなでもっと考えていけるといいですね。先ほど申し上げましたように、ゆとりうむプロジェクトに参画される企業さんの業種が広がることによって、提案できる生活スタイルも増え、それが社会全体を豊かにしていくはずです。