競合していることを意識しない“企業共創”の姿勢
ゆとりうむプロジェクトの大きな特徴が“企業共創”というスタイルだ。「共創(コ・クリエーション)」は、ミシガン大学ビジネススクールのベンカト・ラマスワミ教授とC・K・プラハラード教授の著書『価値共創の未来へ―顧客と企業のCo‐Creation』などで提唱された概念で、自社内外のあらゆる人たちと共に、モノや価値を新たに創造していくことをいう。
長沢 プロジェクトにご参画いただく企業さんは、「1社だけでは社会を動かすことが難しい」という考えをお持ちです。ですから、たとえ同業種であっても、競合していることを意識せず、「プロジェクトを一緒に創っていこう」というスタンスで参画されています。毎年、7月の第3火曜日を「ゆとりうむの日」として、その直前にミニ・カンファレンスのかたちで、プロジェクトの理事と参画企業の皆さんと私たちビルコムの関係者が集まります。活動報告や方針の確認に加え、ゆとりうむプロジェクトを推進するためのアイデアを出し合うのです。今年(2022年)もオンラインでの開催でしたが、企画案を実現するために、ある企業さんがその場で社内関係者に電話してくれたり、と……大人数で盛り上がりました。
直近のゆとりうむプロジェクトの大きな動きが「冷凍貯金ラボ」の発足だ。「冷凍貯金ラボ」は、“各家庭にある食材やおかずを冷凍してストックしておくことで、買い物や調理に費やす時間が減り、毎日の暮らしにゆとりがうまれる”というもので、昨今の冷凍食品人気で注目されているセカンド冷凍庫の利用にも歩調が合う。
長沢 「冷凍貯金」は、旭化成ホームプロダクツさんの主力商品であるサランラップとジップロックのプロモーションの一環として生まれたものです。食品を冷凍しておくことで「時間」と「栄養」と「お金」の貯金ができるという考え方で、「社会の困り事を解決したい」という姿勢の旭化成ホームプロダクツさんが、広告代理店さんとプロジェクト化して進めようという話になったときに、「ゆとりうむ傘下で活動したい」ということで、私たちに協力を求めてくださいました。今年(2022年)5月に“ゆとりうむプロジェクト『冷凍貯金ラボ』発足”のイベントを行い、メディアでも多く報道されました。
物価高の社会状況もあって、「冷凍」はホットワードになっています。「時間」と「栄養」と「お金」の貯金が、心のゆとりにもつながりますから、下味冷凍をはじめ、私たちは「冷凍貯金ラボ」でさまざまな冷凍のテクニックを世の中に伝えていく予定です。もちろん、旭化成ホームプロダクツさんと広告代理店さんと私たちの3社で完結するのではなく、ゆとりうむプロジェクトに参画されている企業さんとコラボしたり、新たな企業さんがご参画いただけることも期待しています。「冷凍貯金」という言葉の注目度が高いので、ゆとりうむプロジェクトの存在も多くの方の目に留まるようになりました。