“やさしく、正しい情報”でコミュニケーションバリアをなくす医薬品とは?

新型コロナウイルス感染症に対する治療薬やワクチン、診断薬の開発でも注目されている塩野義製薬。そのグループ会社であるシオノギヘルスケア株式会社が発売する医薬品「セデス」シリーズが2021年度のグッドデザイン賞を受賞した。2020年6月に全面刷新したユニバーサルデザイン仕様のパッケージが、「店頭に置かれる薬のパッケージとしての集大成とも感じられる研ぎ澄まされたデザイン」と評価された結果だ。同社のビジネスコンセプトである「すべての人にやさしく、正しく、セルフケアを」の一環で刷新された、そのパッケージとは? シオノギヘルスケア株式会社 経営戦略部 プロダクトマーケティンググループ長の吉田敏也さんに話を聞いた。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

多言語対応の「アクセシブルコード」の導入も画期的

「痛くなったらすぐセデス~」のフレーズでお馴染みの解熱鎮痛薬「セデス」シリーズ。その商品パッケージが、一昨年2020年6月にユニバーサルデザイン仕様となり、昨年2021年10月には2021年度グッドデザイン賞を受賞した。シオノギヘルスケア(*1)のNEWS RELEASE(ニュースリリース)によれば、リニューアルのポイントは3つ。(1)前開きの形状と文字拡大による外箱デザインの改良 、(2)視覚障がい者・外国人対応の「アクセシブルコード」の導入、(3)直感的に効能を伝えるピクトグラムの採用 だ。

*1 シオノギヘルスケア株式会社。2016年に塩野義製薬株式会社から分社。本社所在地は大阪府大阪市中央区。

吉田 従来の“開け口”だと、たとえば、視覚障がいのある方から、「どこに開け口があるのかよくわからない」といった声がありました。「ここが開きそうだな」という感覚で間違った箇所を開けてしまったり……。今回のリニューアルのポイントとして、その開け口の変更に加え、フタの裏面(=開け口の裏面)に大きな文字で用法・用量を明記していることも挙げられます。さまざまな方のご意見の中には、「用法や用量をすぐに知りたい」「1回分がわからないから適当に飲んでしまう」というものもありました。用法・用量を誤らないよう、正しく、わかりやすく伝えることに重きを置きました。

 また、ピクトグラムは、「セデスって何に効くお薬ですか?胃腸薬ですか?」とお尋ねになる方もいらっしゃることから、「頭痛、発熱、生理痛に効く」ということを一目でわかるようにしました。医薬品においては、「何に効くのか?」を知らせることがいちばん大切です。日本語の読めない外国人の方にもわかるピクトグラムを表示しています。

“やさしく、正しい情報”でコミュニケーションバリアをなくす医薬品とは?

「アクセシブルコード」の導入もかなり画期的だ。これは、パッケージに印刷されたQRコードをスマートフォンなどで読み取ると、自動音声の読み上げ機能で用法・用量の説明を得られるというもの。デボス(凹)加工付きのQR Translatorコードの表示は医薬品における“世界初”の試みで、現在(2022年1月)は7言語に対応。デボス加工によって、視覚障がいのある方も触覚的にコードの位置を把握することができる。

吉田 セデスのアクセシブルコードで読み取られた言語はデータに蓄積されていて、約60%が日本語です。日本人や日本語で聞きたい外国の方が音声で医薬品の用法・用量などを聞いているようです。そして、残りの約40%の方が外国語での読み取りです。英語や中国語が多いですが、その他の言語も確実にニーズがあって、さまざまな方のお役に立てていることがわかります。

 まだ進化途中ですが、今回のパッケージのユニバーサルデザイン化は、障がいのある方や外国の方だけではなく、あらゆる人たちに満足いただけるものを目指しました。

“やさしく、正しい情報”でコミュニケーションバリアをなくす医薬品とは?

吉田敏也  ToshiyaYOSHIDA

シオノギヘルスケア株式会社
経営戦略部 プロダクトマーケティンググループ長

2009年(平成21年)4月、塩野義製薬株式会社入社。医療用医薬品営業を担当。2018年(平成30年)4月、シオノギヘルスケア株式会社・企画本部配属。2019年(平成31年)4月より現職。