楽天グループ傘下の楽天モバイル(東京都世田谷区)の基地局設置に関して、元社員と協力業者が結託した大掛かりな横領疑惑が取り沙汰されているが、不正に関与していたとされる物流会社の「TRAIL」(東京都港区)は、失敗に終わったあの「楽天エクスプレス」事業の幹線輸送を担っていた取引先だったことが分かった。このほど当時の楽天の社内資料を入手した。(東京経済東京本部長 井出豪彦)
売上高が3年で20倍
急成長したTRAILが事業停止
「楽天エクスプレス」は楽天グループがECサービスについて自前の配送網を整備するため2016年に鳴り物入りで始めた事業だが、昨年5月、唐突に打ち切りが発表された。
今回の楽天モバイルと同じ構図で、社内の責任者と下請け業者の癒着によるキックバック疑惑(昨年11月の拙稿参照)が取り沙汰され、先月も当時軽貨物配送を手掛けていた業者から契約違反などに基づく5億円強の損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こされるなど、いまだに混乱が続き、泥沼化の様相を呈している。
楽天モバイルから基地局設置業務を受託し、業績が急拡大していた日本ロジステック(東京都千代田区、年商405億円)は、楽天モバイルから不正に加担していたとして8月19日付で銀行の預金口座の仮差し押さえを受け、同月30日、東京地裁に民事再生手続き開始を申し立てて経営破綻した。負債は151億円と物流関連業界で今年最大の大型倒産となった。