「自分らしさ」は他者の目線で考えればこそ

――最後に、まとめのひと言をおふたりからいただけますか。

平尾:会社が大きいほど、その会社の「優れたやり方」をされる方が多いと思っています。

その会社の勝ちパターンを超える「自分らしいやり方」や「別のやり方」は、会社が大きいほど意識しないといけないと思います。

大櫃さんはそれを体現してこられた方で、その方が出世するのは多くの大企業の方が勇気づけられたのではないかと思います。

今日は非常に楽しく、面白く、有意義なことを教えていただきました。ありがとうございました。

大櫃:若いころに上司からこう言われました。

「大櫃くん、支店長になりたいのであれば、自分のひとつ上の役職で考えなさい」

自分が課長だったら、これをどう判断したかを考え、課長が出した判断と答え合わせをする。

もっと上を見たいのであれば、支店長がどう判断したか、役員がどう判断したかと答え合わせをする。

これは、「優れたやり方」を持った先輩の答えを学ぶということだと思うんですね。でも、そのときに「俺だったらこうだな」というのが思い浮かび、強くそう感じたら「逆転案」だと思う。

そういうことを積み重ねながら、結果として「自分らしさ」がつくられていくのではないかと思っています。

会社でもそうだと思うんです。「じげんらしさって何ですか?」。こういうことが起こったら、じげんさんはこういう対処するよね。こういうふうに考えるよね。それが培われてくると、じげんらしさということになると思うんです。

それは、先輩や偉い人がやってきたことと、自分の解をぶつけ合いながら、常に自分がジャッジする立場に身を置いて考えることが大事なのです。

自分が社長だったらどう考えるか、自分が支店長だったらどう考えるか、あるいは自分が渋沢栄一だったらどうするかなど、そういう目線まで持つことができれば、きっと「自分らしさ」はつくれていくのではないでしょうか。

正解がない時代だからこそ、常に正しさを自分でつくる姿勢が大事だと思います。

平尾:ありがとうございます。本当にそうですよね。「自分らしさ病」に取りつかれて迷いの森に行ってしまうよりも、先輩方の優れているところを教えていただきながら、ちょっとした違和感を持ちつつ、そのなかから自分らしさが生まれていく。

「自分らしさ病」で悩んでいる若い方は本当に多いので、勇気づけられるお話だったと思います。大変お忙しい中、ありがとうございました。

「自分らしさ病」で悩んでしまう人と、「自分の強み」を武器にできる人との決定的な差