
トランプ政権が繰り出す露骨な重商主義
中長期的な現金流入が国益のバロメーター
米国トランプ政権は、4月9日朝(米国時間)、すべての国に対する一律10%関税の発動に続いて、「相互関税」の第2弾として、日本を含めた約60カ国・地域に対して、「不公平な貿易慣行」などがあるとして高い税率を上乗せする強硬策を打ち出した。
これに対して、各国は激しく反発、中国と米国の報復合戦の応酬に世界の株式相場は急落した。
米国でもダウ工業平均や米国債、ドルが軒並み売られる「トリプル安」となる事態に、トランプ大統領は急きょ、同日午後に上乗せ税率発動の「90日停止」を打ち出したが、中国に対しては税率を125%(20%追加関税を含めると145%)まで引き上げるなど、強硬姿勢を維持したままだ。
トランプ関税政策の見直しを求めて日本や各国と米国との交渉が始まっているが、事態改善の見通しは不透明だ。
トランプ政権は、日本や欧州(EU)などの同盟国や経済関係の緊密な国に対してまで法外な高関税をかけることで、自由貿易を軸にした国際経済体制の転換を図り、中長期的な国益を追求する戦略へとかじを切っている。
対外収支を国益のバロメーターと位置付け、米国内への現金流入の最大化を図る重商主義的なスタンスが前面に押し出されている。同盟国に求める防衛費負担の増額も、米軍の海外駐留経費を削減し、経常収支の改善を図る政策と解釈できる。
だがこうしたトランプ路線は、国際貿易や世界経済に打撃となるだけでなく、米国自身も「黒字は増えれども、豊かさは遠のく」ことになりかねない。